原田くんの赤信号
チョコが欲しいわけではないならば、どうして原田くんは、バレンタインデーにわたしなんかを誘ったのだろう。
幼なじみでもなければ、部活が一緒のわけでもないし、掃除の班だって違う、ただ同じツカサ高校に通う一年三組のクラスメイト、というだけの関係なのに。
「それって、瑠美のことが好きなんじゃないの?」
その日の夕方。
今日の出来事を小学校から高校まで一緒の腐れ縁、美希ちゃんに話すと、彼女は言った。
「瑠美のことが好きだから、単純にデートがしたいだけでしょっ」
わたしはぶんぶんと、横に首を振る。
「ええ?そんなことないない、絶対ないっ」
場所は、自宅最寄り駅の公園のベンチ。コンビニで購入したメロンパンを頬張ると、ほのかに甘い味が、口内に広がった。
対して隣の美希ちゃんが手にしているのは、パッケージに炎のイラストが描かれた、スパイシーなカレーパンだ。
それを割って、美希ちゃんは言う。
「じゃあ、なんでわざわざバレンタインデーに瑠美を誘うのよ。バレンタインっつったらさ、恋愛において超ビッグイベントじゃん。それって瑠美を好きってこと以外に、他の理由ある?」
んーとわたしは少し考えて、すぐに答えた。
「あるといえば、あるよ」
「なに」
「変だからだよ」
「はい?」
「原田くんは、変わってるから。それが理由」
なにその理由、の文字を顔面いっぱいに貼り付けた美希ちゃんは、ハアッと白い溜め息を空に放つと、「はい」とカレーパンを半分差し出してきた。
異なる味のものをふたりでシェアするのは、昔からのお決まりだ。
「どこらへんが変わってんのよ、原田翔平」
「ええ、そんなのいっぱいあるよ」
「そう?原田翔平は普通だと思うけど。どこが、どういう風に変わってんのよ」
「えっとねえ、秋……かな」
「秋?」
思い返せばそう、原田くんは、最初から変なわけではなかった。
「秋くらいから色々と行動おかしいんだよね、原田くん」
ある日突然、急に変わり出したんだ。
幼なじみでもなければ、部活が一緒のわけでもないし、掃除の班だって違う、ただ同じツカサ高校に通う一年三組のクラスメイト、というだけの関係なのに。
「それって、瑠美のことが好きなんじゃないの?」
その日の夕方。
今日の出来事を小学校から高校まで一緒の腐れ縁、美希ちゃんに話すと、彼女は言った。
「瑠美のことが好きだから、単純にデートがしたいだけでしょっ」
わたしはぶんぶんと、横に首を振る。
「ええ?そんなことないない、絶対ないっ」
場所は、自宅最寄り駅の公園のベンチ。コンビニで購入したメロンパンを頬張ると、ほのかに甘い味が、口内に広がった。
対して隣の美希ちゃんが手にしているのは、パッケージに炎のイラストが描かれた、スパイシーなカレーパンだ。
それを割って、美希ちゃんは言う。
「じゃあ、なんでわざわざバレンタインデーに瑠美を誘うのよ。バレンタインっつったらさ、恋愛において超ビッグイベントじゃん。それって瑠美を好きってこと以外に、他の理由ある?」
んーとわたしは少し考えて、すぐに答えた。
「あるといえば、あるよ」
「なに」
「変だからだよ」
「はい?」
「原田くんは、変わってるから。それが理由」
なにその理由、の文字を顔面いっぱいに貼り付けた美希ちゃんは、ハアッと白い溜め息を空に放つと、「はい」とカレーパンを半分差し出してきた。
異なる味のものをふたりでシェアするのは、昔からのお決まりだ。
「どこらへんが変わってんのよ、原田翔平」
「ええ、そんなのいっぱいあるよ」
「そう?原田翔平は普通だと思うけど。どこが、どういう風に変わってんのよ」
「えっとねえ、秋……かな」
「秋?」
思い返せばそう、原田くんは、最初から変なわけではなかった。
「秋くらいから色々と行動おかしいんだよね、原田くん」
ある日突然、急に変わり出したんだ。