原田くんの赤信号
必死な原田くん
訂正しよう。原田くんは『自称天気博士で意地悪で頭の良いしつこい変な人』から『自称』の二文字を取り除いた、『天気博士で意地悪で頭の良いしつこい変な人』だ。
二月一日、月曜日。
「瑠美、早く早くっ」
「ま、待ってっ」
わたしと美希ちゃんは、足音を立てぬよう気をつけながら、放課後の道を行く。
「あ、やばいやばい、一旦ストップ」
「はいっ」
道というか、正確には福井くんの後をこそこそついて行っているだけなのだけど。
いまだ、誰も教えてくれはしない福井くんの住所。賭け事というのはすごい威力だ。みんなよっぽど、コンビニのチキンを奢るのが嫌らしい。
「あ、曲がったよっ。そこの角っ」
こんなクノイチにも似た行動をしなくてはいけないのは、そのゲームを発案した原田くんのせいだ。
不審者同然の動きをするわたしたちは、途中で何人もの生徒や通行人に訝しまれながらも、どうにかミッションをクリアした。
「よしっ。ここが福井斗真の家で間違いないねっ」
電車を乗り継ぎ到着したのは、大きな三十階建てマンション。エントランスのドアを鍵で解除した福井くんは、ドアが開くと同時に、その箱の中へと消えていった。
「瑠美、ここまでの道ちゃんと覚えた?」
「う、うん。覚えた」
わたしたちも、エントランスに足を進める。福井くんの部屋番号を確認するためだ。
ズラリと並んだ郵便ポスト。わたしと美希ちゃんの黒目は、その至る所を彷徨った。
「あった!」
最初に『福井』の文字を発見したのはわたしだった。『205』と書かれた下に、その文字があった。
ところがそれに遅れること僅か数秒、美希ちゃんの方からも「あった!」と喜びの声が聞こえてきた。
確かめてみれば、そこにも『福井』の文字がある。『1001』の福井だ。
ここは三十階建てのマンション。同じ苗字の他人が住んでいても、おかしくはない。
ミッションは、成功したかのように見えただけだった。
二月一日、月曜日。
「瑠美、早く早くっ」
「ま、待ってっ」
わたしと美希ちゃんは、足音を立てぬよう気をつけながら、放課後の道を行く。
「あ、やばいやばい、一旦ストップ」
「はいっ」
道というか、正確には福井くんの後をこそこそついて行っているだけなのだけど。
いまだ、誰も教えてくれはしない福井くんの住所。賭け事というのはすごい威力だ。みんなよっぽど、コンビニのチキンを奢るのが嫌らしい。
「あ、曲がったよっ。そこの角っ」
こんなクノイチにも似た行動をしなくてはいけないのは、そのゲームを発案した原田くんのせいだ。
不審者同然の動きをするわたしたちは、途中で何人もの生徒や通行人に訝しまれながらも、どうにかミッションをクリアした。
「よしっ。ここが福井斗真の家で間違いないねっ」
電車を乗り継ぎ到着したのは、大きな三十階建てマンション。エントランスのドアを鍵で解除した福井くんは、ドアが開くと同時に、その箱の中へと消えていった。
「瑠美、ここまでの道ちゃんと覚えた?」
「う、うん。覚えた」
わたしたちも、エントランスに足を進める。福井くんの部屋番号を確認するためだ。
ズラリと並んだ郵便ポスト。わたしと美希ちゃんの黒目は、その至る所を彷徨った。
「あった!」
最初に『福井』の文字を発見したのはわたしだった。『205』と書かれた下に、その文字があった。
ところがそれに遅れること僅か数秒、美希ちゃんの方からも「あった!」と喜びの声が聞こえてきた。
確かめてみれば、そこにも『福井』の文字がある。『1001』の福井だ。
ここは三十階建てのマンション。同じ苗字の他人が住んでいても、おかしくはない。
ミッションは、成功したかのように見えただけだった。