犬猿☆ラブコンフリクト

その後、ホームルームが終わり授業が始まったのだが・・・。



「重っ・・・!!」



授業開始早々に準備室から機械を運び出せと言われて、運んでいるのだが・・・これがかなり重い。



プラスチックのケースに入れられていて、持ち手もあるにはあるけど・・・正直、重すぎて指がちぎれそうだ。



しかも、男女関係なくこの重いものを持たなくちゃいけないらしい。



仮にも女子にこんな重いもの持たせるとか、鬼畜か、と思わずツッコミたくなる。



由紀みたいなか弱い女の子〜みたいなタイプはどうしろというんだ。



まぁ、でも由紀は──・・・。



「三島さん。重いでしょ?オレが持つよ」



「・・・え、本当?ありがとう、すごく重くて持っていけないかもって思ってたんだ〜」



マドンナと言われるだけあって、男子の方から声をかけに言ってくれているみたい。



さすがはモテモテのマドンナ・・・待遇が違うわ。



私はと言うと・・・。



「おい、辻本。なんだよそのへっぴり腰。もっと腰入れて持てよ」



「うるさいなっ・・・、重いんだから仕方ないでしょ・・・!」



運んでる私に対して茶々を入れる声しかかからず・・・。



自分で運ぶしかない状況の中、重い荷物を持っている手に負荷がかかっているのか、指先が限界を迎えそうだった。



・・・・・・痛いな。



ズキズキと疼きだす指先の痛みに耐えながら準備室を出ようとするけど、重さのあまり腕がプルプルと震え始めてきた。



「おいおい、辻本〜。お前の腕、子鹿みてぇになってるぞ〜」



「うるさいなっ・・・!」



煽り気味な発言に対して少しムカつきながらも、荷物を持ち直そうとした時、重さのあまりフラついてしまう。



その時、後ろにいた誰かにドンッとぶつかってしまった。



「っ・・・」



ぶつかるのと共に聞こえてきた小さく息を飲むような音と、肩に置かれた手。



「あ──ごめん、ぶつかっちゃった」



謝りながら後ろを振り返ると、どうやらぶつかってしまった相手は二海のようだ。



少し驚いたような顔をしながら私のことを見つめていた。



「・・・ホント、猪突猛進なヤツだな〜。1日に何回俺にタックルすれば気が済むんだよ、野蛮人」



そして、少し考え込んだあとに呆れたような口調で言葉を発した。



二海の言葉に、カァッと羞恥心が高まっていくのがわかった。



「なっ・・・!昨日も今日も事故──」



“事故だったじゃん”



そう言おうとした時に、荷物を持つ私の手に二海の手が重ねられ、驚きのあまり言葉につまる。



「ふ・・・二海・・・?」



その真意が分からずに二海の事を見上げると、目が合った途端にフイっと視線を逸らした。



「・・・つーか、お前みたいな野蛮人が精密機械運んでんじゃねーよ。・・・貸せ、運んでやるから」



「・・・え」



“運んでやるから”



素っ気ない口調だし、語尾にかけて小さくなっていく声だけど、確かにそう聞こえた。



でも、なんで・・・?



そんな疑問を抱いているうちに、二海はするりと私から荷物を奪い取った。



そして、まるで重さなんて感じてないかのように持ち上げる。



「あ・・・ありがとう、二海」



荷物を持ってくれた彼に、うつむきながらお礼を言う。



本当なら、顔を見て言いたいんだけど・・・。



なんかちょっと照れくさい感じがして二海の顔を見れなかった。



「・・・おう」



二海から返ってきた素っ気ない返事。




野蛮人だの、猪突猛進な奴だの、言いたい放題言われてムカついたけど・・・。



コイツ、やっぱり優しいかもしれない。


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