犬猿☆ラブコンフリクト
後片付けをしている時も、さっきの出来事を思い出してしまう。
なんの気なく手当してただけなのに、あの視線は反則だ。
まるで、視線で告白を受けているような感覚に陥るような、そんな目。
いや・・・実際に告白されてはいるんだけど、忘れろって言われてるし・・・。
うーん・・・と唸りながらボトルを片付けていると、由紀が何してんの?と言わんばかりの表情をしながら私を見る。
「・・・さっきから見てたけど・・・なに照れたような表情しながらボトルとにらめっこしてんの?」
「あ、いや・・・別に?」
「別にって顔じゃないから言ってんだけど?」
誤魔化そうとしたけど、由紀にはお見通しのようだ。
だけど、二海の事だし由紀に話すのは良くないよね・・・。
「・・・ま、どーせ二海くんのことでしょ?」
「っ・・・!」
バレてる・・・なんでわかったの?
「なに?改めて告白でもされた?」
「いや、違くて・・・私の勘違いかもしれないんだけど、二海と視線合った時・・・なんか、熱を持ってるっていうか・・・好きって感情丸出しだったって言うか・・・」
由紀には話さない方がいいんじゃないかと思いつつも、私は由紀から視線を逸らしながらポツポツと話す。
我ながら自意識過剰なのかもしれないと思いつつも、確信があった。
「はぁ?今更すぎ! 二海くん、茉弘に会ってからずっとそんな感じの目してたけど」
「えっ!?嘘!?」
「嘘ついてどーすんのよ。アンタより散々二海くんを見てきた私が言ってんだから間違いないわよ。・・・気付くの遅すぎ。鈍感すぎて二海くんが可哀想になってくるわ」
二海が、会ってからずっとあの目をしてた・・・?
やっぱり、私の勘違いじゃない?
そんなことを思いながら、口に手を当てて思い返してみる。
思い当たる節がいくつか思いついた。
「・・・全く、そんなことしてると他の人に二海くん取られる──」
「それはダメ!!」
由紀の言葉を遮るように、私は声を出した。
理由はわかんない、けど、それは嫌だった。
「・・・アンタねぇ・・・告白されたのにすぐに返事しないやつが何言ってんのよ」
「そっ、それは二海が返事出す前に忘れろって言うから・・・!!」
「そう言わなきゃいけないようなことアンタがしてたからでしょ!?ホンットに腹立つわね!」
由紀の言葉に、押し黙る。
ぐうの音も出ない。
「・・・アンタ、自分がどうしたいのか考えなさいよ。ずっとこのまま、なんて出来ないと思いなさい」
「う、うん・・・」
「なるべく早くよ!それじゃなくても二海くん待たせてるんだから!」
由紀に押され気味になりながらも、頷く。
そうだよね・・・告白されてからかなり時間経ってるし、早く返事返さなきゃいけないもんね。
だけど・・・二海は忘れろって言ってたし・・・。
「・・・答え出すのはいいけど、忘れろって言われてるし・・・」
「そんなの強がりに決まってるでしょ!?まだアンタに未練タラタラよ、アイツは。じゃなきゃあんな視線送らないって」
ですよねぇ。
そんなことを考えながら片付けを終わらせる。
やっぱり、答え出さなきゃいけないよね。
だけど・・・私はどう思ってるんだろ・・・。
「・・・アンタさ、山崎に告られた時はどう思ったのよ」
「え?・・・どうって・・・ビックリはしたけど・・・」
驚きはしたけどなんとも思わなかったと思う。
迫られた時は怖くなったけど。
「じゃあ、二海くんの時は?」
「二海の時──」
あの時のことを思い出しただけで、顔が熱くなっていく。
ビックリしたし、恥ずかしかったし・・・ドキドキした。
その時のことを思い出して軽くパニック状態になる。
「・・・そんな顔しといて自覚無し?アンタってホント馬鹿なのね」
「なっ、馬鹿って・・・!」
「本当の事でしょ。二海くんの事どう思ってるのか、ちゃんと考えなさい。・・・まぁ、すぐ分かると思うわ」
そう言って、由紀は荷物を持って帰る。
すぐ分かるって言っても・・・わかんないよ。
私は熱くなった頬を押さえながら考え込んだ。