NEVER~もう1度、会いたい~
2人きりになった途端


「おい、どういうことだよ?」


翔平がやや声を潜めて、でも勢い込んで聞いて来る。


「どういうことって、一般的な人事異動です。当院には看護師のキャリアアップ制度というのがあって担当病棟のクロスオ-バ-が推進されています。もちろん、本院と分院の人事交流も珍しいことではありません。今回の異動もその一環です。」


「でもこんな・・・。」


「えっ?高城さんは私より中川さんのままの方がよかったんですか?」


とにこやかに、でも目は全く笑っていない未来に問い掛けられて


「いや、別にそうじゃねぇけど・・・。」


翔平はゴニョゴニョと口ごもるように答える。


「なら問題ありませんよね。では、改めてよろしくお願いしますね、高城さん。」


澄ました顔でそう言った未来は、そのまま車イスを押して行く。


それから・・・動揺を内心に抱えたまま、午前中のリハビリを終えた翔平。再び未来の手を借りて、病室に戻る途中


「午後は松葉杖で行きましようね。」


と未来に声を掛けられる。


「えっ?」


「車イスを使う時間を減らして行きましょう。っていうか、本院にいた最後の方は、もっと松葉杖使ってましたよね?ちゃんと本多先生から聞いてますから。」


「あ、ああ・・・。」


「こちらに来て、トレ-ニングの負荷やレベルが上がって、大変なのはわかりますが、だいぶ中川さんに甘やかされてたみたいですね。」


「なっ・・・。」


「ということで、これからは院内の移動は極力車イスはなしにします。いいですね?」


「わかった。」


翔平は頷くしかなかった。


そのあと、食事と休憩を挟んだ午後のリハビリ、更にはリハビリとは別の上半身のトレ-ニングをこなす翔平を、未来は献身的にサポ-トはしたが、彼女は翔平の専属看護師ではない。中川から引き継いだ他の患者たちの看護も当然ながら、怠りなくこなしていた。


そしてあっという間に夕方となり、夜勤担当の看護師と共に病室に現れた未来は


「高城さん、交代の時間なので、今日はこれで失礼します。また明日、よろしくお願いします。」


と言うと、病室をあとにした。自分を「高城さん」と呼び、敬語で話し、あくまで担当患者の1人として扱う未来の態度は2人きりになった時間でも全く変わらず、翔平はただただ戸惑うだけであった。
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