NEVER~もう1度、会いたい~
翌日も、その翌日も、未来の態度は変わらなった。彼女にとって3日目の勤務は夜勤で、夜勤明けでそのまま休日に入る看護師の勤務形態は、翔平もよくわかっていた。担当交代の挨拶を終え、病室を後にする未来の後ろ姿をこれから実質2日間、彼女の顔を見られない寂しさと、でも今のよそよそしい関係から解放されてホッとしたような気持ちが入り混じった複雑な思いで翔平は見送った。


それでも、その日も精力的にリハビリをこなした翔平。こちらに転院してほぼひと月。少しずつではあるが、事態が好転していることを、翔平は実感していた。夕方、心地よい疲れを感じながら、まったりとしていた彼のもとに


「高城さん、お見舞いの方がお見えです。」


看護師が知らせにやって来た。


「そう、誰だろう?」


京王記念病院やさいたまの本院にいる頃は、友人知人の見舞客もあったが、伊東に来てからは、両親とマネ-ジャ-くらいしか来る人はいなくなっていた。もっとも1週間ほど前になるが、極秘裏にW杯を戦い終えたばかりの日本代表の松前監督と長谷キャプテンが訪ねて来た。


見事を予選を突破し、勇躍本戦にコマを進めたサムライブル-だったが、初戦で敗れ、最高順位の更新はならずにベスト16で大会を終えた。


戦いを終えた2人を労った翔平が、リハビリがようやく軌道に乗り始めたことを報告すると、2人は喜びと安堵の表情になった。そして大会終了をもって、松前が代表監督を退任、更に長谷も代表引退を決めたことを告げ、驚く翔平に


「未練がないと言えば、ウソになるが、サムライブル-がベスト8、更にその上を目指す為には、世代交代が必要だよ。4年後はお前がキャプテンになって、チ-ムを引っ張って、是非今回欠場のウップンを晴らしてくれ。」


長谷は吹っ切れたように穏やかな表情で言った。


そんな情景を思い出しながら、見舞い客を待っていると


「翔くん、来たよ~。」


という明るい声と共に未来が入って来た。


「未来・・・。」


唖然とする翔平に


「今日もリハビリ頑張ってたって聞いたよ、お疲れ様。」


未来はにこやかな笑顔を向ける。


「リンゴ買って来たんだ、あとで剥いてあげるね。」


「あ、ああ・・・。」


戸惑いの表情を浮かべている翔平に


「どうしたの?」


不思議そうに尋ねる未来。


「だってお前・・・。」


「今朝までと態度が違うって言いたいんだ。」


「ああ・・・。」


「そんなの当たり前じゃん。今朝までの私は看護師、でも今は・・・ね。」


「未来・・・。」


「翔くん、ちょっと外の空気を吸いに行かない?裏手の紅葉が綺麗だよ。」


そう言って、未来は屈託のない笑顔を見せた。
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