先生、優しくしないで
個室の鍵を閉め、ポーチを開ける。その時、有紗は「最悪」と呟いてしまった。

ポーチの中にはナプキンや生理用ショーツは入れられていたものの、今も有紗を苦しめている腹痛を抑える痛み止めは入っていない。入れ忘れてしまったのだろう。

「今日はもう授業は終わったから家まで我慢すればいいだけの話だけど……」

ショーツを履き替え、有紗は少しフラつきながら個室を出る。女の子の日、そう意識すると痛みが先ほどよりも増しているような気がした。お腹だけでなく、腰や頭も痛み、吐き気も感じ始めている。

「ううっ!」

急に痛みが増し、有紗はその場にしゃがみ込む。お腹を必死にさする有紗の横を、見て見ぬ振りをしながら生徒たちが通り過ぎていく。助けてもらえない、そう理解した時有紗の目には涙が滲んだ。

(まあ、あの人たちから見たら私は廊下の真ん中でうずくまっている迷惑な人だから、仕方ないよね……)

痛みで目の前がチカチカと光が飛び始める。もうこのまま意識を手放した方が楽、そう有紗が思った時、有紗の肩に誰かが優しく触れた。
< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop