先生、優しくしないで



有紗がウィリアムを好きになったのは、ちょうど一年前のことだ。

一年前、有紗は両親の仕事の都合で家族でこのイギリスへとやって来た。英会話を習っていたため英語は少しは話せたものの、日本とは全く違う環境に有紗はなかなか馴染むことができず、いつも一人でいることが多かった。

毎日がどこか怖く、学校ではいつも俯いていた。友達と呼べる存在はおらず、有紗の頭の中はいつも遠く離れた日本のことしかなかった。

そんなある日、嫌々ながらも学校へ行き、授業を聞いていた有紗は、突然の腹痛に驚く。それは、冷たいものを食べた時に胃が痛むものではないとすぐに有紗は気付く。それと同時にため息を吐きたくなった。

(最悪……。女の子の日が来るなんて……)

授業が終わってすぐ、かばんの中からナプキンや生理用ショーツが入っているポーチを取り出し、トイレへと向かう。その間にも、誰かに殴り付けられているような痛みは強くなっていく。
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