旅先恋愛~一夜の秘め事~
責任感の強い暁さんは、きっと自分から別れを切り出したりしないだろう。


だからこそ私が離れる覚悟を決めるべきでは?


胸に重くのしかかる現実とつらい決断に、食事は一向に進まなかった。


なんとか一日の業務を終えて、帰路に就く。

夕食の買い物をしようかと迷ったが、ひとりだけなのでそのまま帰宅した。

着替えを済ませ、冷凍してあった鶏そぼろ、ほうれん草、白米を解凍し、炒り卵を作った。  

昨日作っておいた味噌汁を温め直し、生野菜を取り出し簡単なサラダを作る。

鶏そぼろ丼とサラダ、味噌汁の夕食を手早く済ませ、片付ける。

その後入浴し、再びダイニングでミネラルウォーターを口にして、リビングのソファに腰かけた。

テレビ台の上に置かれた液晶時計は午後十一時半を示していた。


そろそろ寝室に向かおうかと思っていると、玄関で物音がした。

すぐにこちらへと近づく足音が聞こえて、暁さんの帰宅を知った。

リビングルームへ続くドアを開けて、彼を迎える。


「お帰りなさい」


「ただいま、起きてたのか?」


「さっきお風呂に入ったところだったから。もう少ししたら寝室に向かうわ」


彼の表情が少し強張っているように感じ、起きていないほうがよかったのかと焦る。

就寝時間の強制や私の行動を制限する真似を彼はしない。

だけどちょっとした私の体調の変化をとても心配してくれる人なので、できるだけ夜は早めに眠るようにしている。
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