旅先恋愛~一夜の秘め事~
ふたりで帰宅し、三年前の出会いも含めこれまでの出来事について本音で話し合った。

お互い気になっていた点や心配なこと、様々な感情を吐露しあった。

話せば驚くほど単純な物事を、俺たちは勝手に複雑にしていた。

俺の想いを受けとめ、気持ちを寄せてくれた唯花への愛しさは募るばかりだ。

もちろん、元々の誤解を招いた副社長室での堤との会話についても主に古越家への対策だときちんと説明した。


唯花が作ってくれた差し入れは話し合いが終わったあと、ふたりで食べた。

今まで口にしたどんな料理よりも幸せな味がした。

俺はこの食事をきっと一生忘れないだろう。


その後、風呂に一緒に入り、寝室で手をつなぎ横になった。

ギュッと眠りにつく前に抱きしめた温かさに心が満たされる。

腕のなかにいるかけがえのない存在を確かめるように頬に触れ、髪を梳く。

さらさらと指から零れ落ちる髪の手ざわりが好きだと伝えたら、妻はどんな表情をするだろう。


胸にこみ上げる際限ない愛しさを、『愛している』以上の言葉で表現できればいいのにな。


なあ、唯花。


目が覚めたら今日はなんの話をしようか?
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