旅先恋愛~一夜の秘め事~
彼の声にハッとする。

暁さんの手の中には私のバッグと産婦人科の領収書があった。


「唯花、これはなんだ? 病院を受診していたのか?」


尋ねられ、口の中がカラカラに乾く。

至近距離からの強い視線に耐えられず下を向いた。


なんて言えばいい?

 
頭の中を幾つもの言い訳がよぎり、背筋に冷たい汗が流れる。


「……もしかして……妊娠しているのか?」


正解を言い当てられビクリと肩が揺れる。

指先を感覚がなくなるほど強く握りしめた。


どうしよう、こんなすぐにバレるなんて……!


彼の反応を見るのが怖くてギュッと目を瞑る。

ふらついていた足は今や震えている。


「唯花、顔を上げてくれ……頼むから」


懇願するような声に、胸が強い力で締めつけられた気がした。


「き、暁さんに迷惑はかけません。今後社外で会ったりもしないから……っ」


産みたい、という言葉は再度抱き込まれて口にできなかった。

彼が私の頬を大きな手で包み込み、上を向かせた。

泣きそうな、それでいてどこか嬉しそうな表情を浮かべた暁さんと目が合う。


「なんで……そんな言い方をする? どうしてすぐに言わなかった? ずっと……不安だったんじゃないのか?」


労わるような優しい物言いに、思わず言葉が零れた。
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