旅先恋愛~一夜の秘め事~
「……迷惑、じゃないの?」


「迷惑なはずがない。唯花が俺たちの子どもを妊娠してくれて本当に嬉しい」


「私、赤ちゃんを産んでいいの……?」


「当たり前だろう!」


「困らないの……?」


「なんで困るんだ? 俺が検診に付き添えるかを気にしてるのか? スケジュールを調整するから大丈夫だ、心配するな」


ふわりと相好を崩した彼が両頬から手を外し、そっと私の体を抱きしめる。


「……私、妊娠したからもう暁さんには会えないと思って……」


「それであのメッセージか……」


しばし沈黙した彼はどうやら合点がいったらしい。


「念のためにもう一度聞くが、大事な人って誰だ?」


「……赤ちゃんよ」


「そうか」


フッと口角を上げた暁さんは優しい手つきで私の髪を撫でた。


「……ひとりで悩ませて悪かった。怖かったんじゃないか?」


コツンと私の額に自分の額を合わせて、謝罪する。

その声の温かさに涙腺が崩壊し、涙が零れ落ちた。


「こんなに泣かせて……気づけなくて悪かった」


私が隠していただけで、暁さんは悪くない。


なのに、どうしてそんなに優しくするの?


あなたが大事にしたい人は私じゃないでしょう? 


このままじゃ勘違いしそうになる。


「顔色が良くないな。大事な体なのに冷やしたらダメだ」


「貧血の相談を病院でしたから大丈夫よ」


「そういう問題じゃない。四月とはいえ、まだ朝晩は冷えるだろう。貧血気味なのか? なんで早く言わないんだ」
< 97 / 173 >

この作品をシェア

pagetop