訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
「りこちゃん、こんどおばあちゃんいく?」
「そうね、また電話してみるわね」
「うん」

私が登生の存在を知らなかったように、両親もこの子の存在は知らなかったらしい。葬儀の時に初めて対面して、驚いていた。

私の実家は東京から電車で2時間ほどかかる関東の田舎町。
私も姉も大学入学の為家を出るまでそこで育った。
父は仕事人間で、家事はほとんどが母の役目。今の時代からすると非協力的な父だったけれど、当時はそんなものだと思っていた。
ただ、私が二十歳の時に母に乳がんが見つかり無理ができない体になったことで状況が変わる。
私も姉もこの先どうなるだろうと心配した。けれど、両親は2人で生活することを希望し、それまで母一人でこなしていた家事は父と分担するようになった。2人で助け合って今でも幸せに暮らしている。
そんな中で起きた姉の事故死と、登生の存在。
両親とも何も言わなかったけれど、2人にとって登生の子育ては負担が大きすぎるように思えて、私が登生を引き取ることにした。

「おじいちゃん、かたぐるましてくれるかなあ」
「そうね」

登生の存在に驚いてはいたものの、とてもかわいがってくれている両親。
行けば遊んでくれるし、時々は声を聞きに電話もくれる。
こんなにかわいがってくれるのに、姉はなぜ何も言わなかったんだろう。
それも私の中の疑問の一つだ。
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