訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
まさかの急接近
幸いなことに、登生の発熱はその日の内に治まった。
翌日から元気に登園してくれて、私が仕事を休むこともなかった。
「せんせい、さようなら」
「はい、登生くんさようなら」
手を振って元気に保育園を後にする登生。
3歳児のパワーって本当にすごいと思う。
疲れってものを全く感じないし、いつでもどこでも走り出す。
「あっ」
心配した矢先、登生が一人で駆け出した。
「こらっ、待ちなさい」
私も慌てて後を追う。
都心にある保育園は敷地内こそ安全だけれど、一歩門を出れば交通量の多い道ばかり。実際、すみれ保育園の前も大きな道路だ。
歩道が広めにとってあるからいきなり飛び出すことはないはずだけれど・・・
嘘っ。
いつもなら必ず止まって左右を確認するはずの登生が、減速することなく道路に向かっている。
マズイ。
そう思った時、聞こえてきたブレーキ音。
キィーッ。
次の瞬間、私の中で時間が止まった。