冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「いつも守ってくれてありがとう」
オルテンスを狙う者たちは実際に存在していた。オルテンスは何の力もない少女なので、狙われていると言われたところで出来ることは特にない。オルテンスはミオラに言われたように一人にならないようになどを気を付けるぐらいである。
オルテンスは自分のことを狙ったところでどうしようもないと思っていて、それこそ自分の命が失われたところで悲しむ人がいないと思っている。ミオラたちに大切だと言われてもその根本的な気持ちはなくならない。
そういう生き方をしてきたからこそ、その根本的な考え方はなかなかなくなることはないのだ。
「オルテンス様、今日は雨ですね」
「うん」
「日向ぼっこは出来ませんね。本でも読みますか？ それともお菓子でも食べてのんびりしますか？」
「えっと……」
日向ぼっこが好きなオルテンスは、窓の外で降り注ぐ雨をじっと見ている。
ミオラは雨が降っていることにオルテンスが落ち込んでいるのかなと思っているようだが、それは違う。
オルテンスは確かに日向ぼっこが好きだが、だからといって雨が嫌いなわけではない。ぽたぽたと空から降り注ぐ雨は、恵みの水である。雨の匂いなどもオルテンスは嫌いではなかった。
今日は雨なので、オルテンスは王城の中を散歩することにした。
今までの花嫁候補たちは、特定の場所から出さないようにとデュドナから命令が下されていた。しかしオルテンスに関しては王城の中を動く許可を得ていた。デュドナに自覚がなかったとしても、オルテンスのことを気に入っている様子なのは明白である。
王城には沢山の人々が居るので、そのすべてがオルテンスに好意的かと言われると当たり前の話だがそうではない。オルテンスに好意的なものが多いが、当然、オルテンスを嫌うものもいる。
デュドナはとても美しい王である。その王に好意を抱き、いつかその目に止まれればと思っているものも王城にはいるのだ。
デュドナは愛妾なども持っていないが、歴代の王の中には王城に仕えるものたちの中から気に入ったものを愛妾としたものも当然いる。だけどデュドナにはそう言う相手は誰一人いない。もしかしたら王の愛妾になれるのではないか……という希望を抱いているものもいるのだ。
「お城の中はキラキラしたものが沢山ね」
「ふふ、そうですね」
オルテンスは壁にかけられている絵などを見ながら嬉しそうに笑っている。
王城の中に置かれている家具などは、高価なものばかりである。王侯貴族が安いものばかりおいていてもそれはそれで評判が下がるので、高級なものがそろえられている。
そう言う教養がそこまでないオルテンスは高級なことは分かっても実際の値段などは把握できていない。
にこにこしながら王城を歩くオルテンスには様々な視線が向けられている。悪意ある視線を向けてくるものもいるが、そういう人たちがオルテンスに手を出すことは出来ない。ミオラたちがすっかりガードしているのもあり、オルテンスに何もできないものたちは悔しそうな顔をしている。
オルテンスがデュドナとそれなりに仲よくしており、ミオラたちと親しくしている事実はデュドナの愛を求めている者達からしてみれば気に食わないことなのだ。
嫌がらせをしようとしたものもいたが、それはミオラたちに発見されて嫌がらせそのものを出来なかった。嫌がらせ未遂だが、その者は王城から去ることになった。一種の見せしめである。ちなみにそういうことが裏で行われていたことをオルテンスは知らない。
さて、オルテンスは知らない間に守られているわけだが――、何事にも絶対というものはない。幾ら守りを固めてもそれを突破するものが居ないわけではない。
ある日のことである。オルテンスの部屋に侵入者があった。オルテンスに何かする前に捕まったものの、オルテンスはその姿をはっきりと見てしまった。
「オルテンス様、申し訳ございません。私たちがもっとしっかりオルテンス様のことを守れていれば恐ろしい思いをすることもなかったでしょうに」
「大丈夫だよ。何もされていないもの」
オルテンスはそう言うものの、ミオラはショックを受けた様子である。
「……ねぇ、ミオラたちはああいう人たちから私のことを守ってくれているの？」
「はい」
「私が気づかないうちに守られていることもきっとあったとおもうの。だからいつも守ってくれてありがとう」
オルテンスは自分がどんなふうに守られているか、把握していなかった。でもミオラの様子を見ていて自分が思っている以上に守られていることは分かった。だからオルテンスはそう口にした。
オルテンスは自分のことを狙ったところでどうしようもないと思っていて、それこそ自分の命が失われたところで悲しむ人がいないと思っている。ミオラたちに大切だと言われてもその根本的な気持ちはなくならない。
そういう生き方をしてきたからこそ、その根本的な考え方はなかなかなくなることはないのだ。
「オルテンス様、今日は雨ですね」
「うん」
「日向ぼっこは出来ませんね。本でも読みますか？ それともお菓子でも食べてのんびりしますか？」
「えっと……」
日向ぼっこが好きなオルテンスは、窓の外で降り注ぐ雨をじっと見ている。
ミオラは雨が降っていることにオルテンスが落ち込んでいるのかなと思っているようだが、それは違う。
オルテンスは確かに日向ぼっこが好きだが、だからといって雨が嫌いなわけではない。ぽたぽたと空から降り注ぐ雨は、恵みの水である。雨の匂いなどもオルテンスは嫌いではなかった。
今日は雨なので、オルテンスは王城の中を散歩することにした。
今までの花嫁候補たちは、特定の場所から出さないようにとデュドナから命令が下されていた。しかしオルテンスに関しては王城の中を動く許可を得ていた。デュドナに自覚がなかったとしても、オルテンスのことを気に入っている様子なのは明白である。
王城には沢山の人々が居るので、そのすべてがオルテンスに好意的かと言われると当たり前の話だがそうではない。オルテンスに好意的なものが多いが、当然、オルテンスを嫌うものもいる。
デュドナはとても美しい王である。その王に好意を抱き、いつかその目に止まれればと思っているものも王城にはいるのだ。
デュドナは愛妾なども持っていないが、歴代の王の中には王城に仕えるものたちの中から気に入ったものを愛妾としたものも当然いる。だけどデュドナにはそう言う相手は誰一人いない。もしかしたら王の愛妾になれるのではないか……という希望を抱いているものもいるのだ。
「お城の中はキラキラしたものが沢山ね」
「ふふ、そうですね」
オルテンスは壁にかけられている絵などを見ながら嬉しそうに笑っている。
王城の中に置かれている家具などは、高価なものばかりである。王侯貴族が安いものばかりおいていてもそれはそれで評判が下がるので、高級なものがそろえられている。
そう言う教養がそこまでないオルテンスは高級なことは分かっても実際の値段などは把握できていない。
にこにこしながら王城を歩くオルテンスには様々な視線が向けられている。悪意ある視線を向けてくるものもいるが、そういう人たちがオルテンスに手を出すことは出来ない。ミオラたちがすっかりガードしているのもあり、オルテンスに何もできないものたちは悔しそうな顔をしている。
オルテンスがデュドナとそれなりに仲よくしており、ミオラたちと親しくしている事実はデュドナの愛を求めている者達からしてみれば気に食わないことなのだ。
嫌がらせをしようとしたものもいたが、それはミオラたちに発見されて嫌がらせそのものを出来なかった。嫌がらせ未遂だが、その者は王城から去ることになった。一種の見せしめである。ちなみにそういうことが裏で行われていたことをオルテンスは知らない。
さて、オルテンスは知らない間に守られているわけだが――、何事にも絶対というものはない。幾ら守りを固めてもそれを突破するものが居ないわけではない。
ある日のことである。オルテンスの部屋に侵入者があった。オルテンスに何かする前に捕まったものの、オルテンスはその姿をはっきりと見てしまった。
「オルテンス様、申し訳ございません。私たちがもっとしっかりオルテンス様のことを守れていれば恐ろしい思いをすることもなかったでしょうに」
「大丈夫だよ。何もされていないもの」
オルテンスはそう言うものの、ミオラはショックを受けた様子である。
「……ねぇ、ミオラたちはああいう人たちから私のことを守ってくれているの？」
「はい」
「私が気づかないうちに守られていることもきっとあったとおもうの。だからいつも守ってくれてありがとう」
オルテンスは自分がどんなふうに守られているか、把握していなかった。でもミオラの様子を見ていて自分が思っている以上に守られていることは分かった。だからオルテンスはそう口にした。
