冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「王都って広い」
「わぁ……」
オルテンスは感嘆の声をあげている。
オルテンスはお忍びの服装に着替えて、王都へと来ていた。
オルテンスはその長い髪を二つに結んで、かわいらしい髪飾りをつけ、黄色のワンピースを身に纏っている。ちなみにその恰好を見て王城の人々はその段階で打ち抜かれていた。
オルテンスにとってこういう風に街にやってくるというのも初めての経験である。その初めての経験がこのメスタトワ王国の中でも最も栄えている王都。
彼女が興奮しないはずもなかった。その黒い瞳を輝かせている。
その様子に護衛としてきている者達は、嬉しそうな顔をしている。内心で可愛いと思っているのがバレバレである。ちなみにこっそりとオルテンスとデュドナの護衛としてついてきている影のものたちも同様の様子のようだ。
……オルテンスの隣に居るデュドナは護衛がこのありさまで大丈夫なのだろうかと少しだけ心配になった。
とはいえ、オルテンスの可愛さにやられてはいるものの彼らは真面目に仕事はこなしている。
お忍びだということで、オルテンスもデュドナも髪の色などを変化させている。それでいて魔法具も使用しているので、オルテンスとデュドナのことに気づくものはあまりいないことだろう。
「へい」
「デューと呼べ」
「……デュー様」
「お忍びだから様付けはよせ」
「じゃあ、デューさん」
オルテンスは目を輝かせたまま、デュドナのことを陛下と呼ぼうとして咎められ、様付けをして、さん付けへと変える。
「王都って広い」
「何を当たり前のことを言っているんだ」
「だって、とっても広いから。それに人も沢山いて……、びっくりして」
その言葉からもオルテンスが栄えている街に顔を出したことがないことがうかがえるだろう。
この栄えている、人が沢山いる場所はオルテンスにとって知らない世界だ。
オルテンスは市政に降りたことはなかった。迫害されていた王女であったため、民の前に姿を現わしたこともない。彼女の世界は彼女の目の前に現れる人々だけで完結していた。
このメスタトワ王国にやってくる前は、それこそ自分を傷つけるものしか知らなかった。
お忍びで王都に降りてきているオルテンスのことを、誰も気にしていなかった。祖国に居た頃のように嫌な目を向けられることもなければ、ミオラたちのように優しい目をすることもない。
そう言う風に、誰にも気にされないというのも不思議だった。
嫌悪も好意もない。これだけ多くの人たちが溢れている場所だからこそ、互いが必ずしも知り合いであるわけではないのだろう。
「それで、何処に行きたいんだ?」
「……えっと、とりあえず見て回りたいです。こんなに沢山人が居る場所をちょっと歩いてみたいなとかも思ってて」
こういう場所に降り立ったのが初めてのオルテンスは、一先ず自分の足でこの初めての場所を歩いてみたいと思ったようである。
沢山のお店や家が立ち並んでいて、両手で数えきれないほどの沢山の人たちが動いている。その場所をただ歩いてみたいと思ったのだ。
「あ、でも、へい……デューさんは行きたい場所があったらそっちに行ってください」
でもただ歩くだけだとデュドナは退屈かもしれないと考えて、オルテンスは気を使うようにそういう言葉を口にする。
デュドナのことを見上げる視線は遠慮するようだが、だけれどもデュドナが一緒にいてくれると嬉しいとありありと書いてあった。
それとなく近くにいる護衛は、『オルテンス様と一緒に行きましょう』という圧をデュドナに向けていた。
デュドナは「気にするな。お前と一緒にいく。俺は何度もきているからな」とそう口にするのだった。
そうすればオルテンスは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」
「それで、どこを歩きたいんだ?」
「どこをとかは決まってなくて……ちょっと、ただ歩いてみてもいいですか?」
「ああ」
「危険な場所とかに行きそうだったら止めてください」
「それは大丈夫だ。オルテンスに何かする前に捕縛されるだろうから」
そう言う会話を交わした後、オルテンスは歩き始めた。
その隣にデュドナ、その後ろにはミオラと護衛騎士のカーズというものがいる。また周りにはひっそりと控えている護衛騎士や影のものたちがいる。
オルテンスが嬉しそうに歩く様子を後ろから見ていたミオラは、その顔をだらしなく緩めてしまいそうで、気を付けながらキリッとした表情にしていた。
ちなみにお忍びなので、ミオラたちも王城に私服を着ている。
オルテンスは感嘆の声をあげている。
オルテンスはお忍びの服装に着替えて、王都へと来ていた。
オルテンスはその長い髪を二つに結んで、かわいらしい髪飾りをつけ、黄色のワンピースを身に纏っている。ちなみにその恰好を見て王城の人々はその段階で打ち抜かれていた。
オルテンスにとってこういう風に街にやってくるというのも初めての経験である。その初めての経験がこのメスタトワ王国の中でも最も栄えている王都。
彼女が興奮しないはずもなかった。その黒い瞳を輝かせている。
その様子に護衛としてきている者達は、嬉しそうな顔をしている。内心で可愛いと思っているのがバレバレである。ちなみにこっそりとオルテンスとデュドナの護衛としてついてきている影のものたちも同様の様子のようだ。
……オルテンスの隣に居るデュドナは護衛がこのありさまで大丈夫なのだろうかと少しだけ心配になった。
とはいえ、オルテンスの可愛さにやられてはいるものの彼らは真面目に仕事はこなしている。
お忍びだということで、オルテンスもデュドナも髪の色などを変化させている。それでいて魔法具も使用しているので、オルテンスとデュドナのことに気づくものはあまりいないことだろう。
「へい」
「デューと呼べ」
「……デュー様」
「お忍びだから様付けはよせ」
「じゃあ、デューさん」
オルテンスは目を輝かせたまま、デュドナのことを陛下と呼ぼうとして咎められ、様付けをして、さん付けへと変える。
「王都って広い」
「何を当たり前のことを言っているんだ」
「だって、とっても広いから。それに人も沢山いて……、びっくりして」
その言葉からもオルテンスが栄えている街に顔を出したことがないことがうかがえるだろう。
この栄えている、人が沢山いる場所はオルテンスにとって知らない世界だ。
オルテンスは市政に降りたことはなかった。迫害されていた王女であったため、民の前に姿を現わしたこともない。彼女の世界は彼女の目の前に現れる人々だけで完結していた。
このメスタトワ王国にやってくる前は、それこそ自分を傷つけるものしか知らなかった。
お忍びで王都に降りてきているオルテンスのことを、誰も気にしていなかった。祖国に居た頃のように嫌な目を向けられることもなければ、ミオラたちのように優しい目をすることもない。
そう言う風に、誰にも気にされないというのも不思議だった。
嫌悪も好意もない。これだけ多くの人たちが溢れている場所だからこそ、互いが必ずしも知り合いであるわけではないのだろう。
「それで、何処に行きたいんだ?」
「……えっと、とりあえず見て回りたいです。こんなに沢山人が居る場所をちょっと歩いてみたいなとかも思ってて」
こういう場所に降り立ったのが初めてのオルテンスは、一先ず自分の足でこの初めての場所を歩いてみたいと思ったようである。
沢山のお店や家が立ち並んでいて、両手で数えきれないほどの沢山の人たちが動いている。その場所をただ歩いてみたいと思ったのだ。
「あ、でも、へい……デューさんは行きたい場所があったらそっちに行ってください」
でもただ歩くだけだとデュドナは退屈かもしれないと考えて、オルテンスは気を使うようにそういう言葉を口にする。
デュドナのことを見上げる視線は遠慮するようだが、だけれどもデュドナが一緒にいてくれると嬉しいとありありと書いてあった。
それとなく近くにいる護衛は、『オルテンス様と一緒に行きましょう』という圧をデュドナに向けていた。
デュドナは「気にするな。お前と一緒にいく。俺は何度もきているからな」とそう口にするのだった。
そうすればオルテンスは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」
「それで、どこを歩きたいんだ?」
「どこをとかは決まってなくて……ちょっと、ただ歩いてみてもいいですか?」
「ああ」
「危険な場所とかに行きそうだったら止めてください」
「それは大丈夫だ。オルテンスに何かする前に捕縛されるだろうから」
そう言う会話を交わした後、オルテンスは歩き始めた。
その隣にデュドナ、その後ろにはミオラと護衛騎士のカーズというものがいる。また周りにはひっそりと控えている護衛騎士や影のものたちがいる。
オルテンスが嬉しそうに歩く様子を後ろから見ていたミオラは、その顔をだらしなく緩めてしまいそうで、気を付けながらキリッとした表情にしていた。
ちなみにお忍びなので、ミオラたちも王城に私服を着ている。