ネジの飛んでいる彼
「そうそう。俺、定期入れに由利ちゃんの写真入れてるじゃん。学校で、S女子学園の子と付き合ってるって知られると必ず、合コンセッティングしてくれだの、彼女のご学友を紹介してくれだのって…。今日もまた頼まれたよ。でも、そういうのって奇妙にしか思えなくて断ってるけど。学校で女の子を判断するなんて、俺には意味不明だし…」

「うん。それは私も理解できない。そもそも学校の友達、あんまり男の子に興味ないからこそ、わざわざ中学受験してまで女子校に来たという印象かな。ねぇ、休憩終わる前にクッキー食べちゃったら?」

「そうだね。おばさんのクッキー、凄く美味しいから嬉しいよ」

「よかった」

「由利ちゃんが作ったら…砂糖と塩は絶対に間違えるよね。高血圧の人がぶっ倒れるような、塩分濃厚殺人クッキー。未必の故意で嫌いなおっさんを殺せそう。それか、砂糖の量を大幅に間違えて、糖尿病のおっさんを…」

「バカにしないでよ!クッキーぐらい私だって…単に作ったことないだけで、作ろうと思えば…」

あ、やっぱり下手なこと言わない方がよかったかな…と思い、話をそらそうとしたとき、

「あのさ、由利ちゃん」

声のトーンを落として、ヒロくんが私の顔を覗き込んでくる。

「由利ちゃんの“初めて”は…絶対に俺が欲しいんだけど、いいよね?」
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