愛されたいと叫ぶ夜

第三話

三話
〈なななな何事ー!?〉
驚愕した真帆の顔

爽汰「取れた。髪についてましたよ米粒。今日のパエリアじゃないかな? 米の色、黄色いし」
ははっと笑う爽汰

〈こ、米……?〉

爽汰「ははっ、真帆さん顔真っ赤になってますよ。もしかしてキスでもされると思いました?」

爽汰が意地悪な笑みを真帆に見せる。

〈キュン……〉

つい、キュンとしてしまった真帆。
意地悪な笑みで真帆をからかう爽汰

真帆「んなっ! そんなわけないでしょ! それに私既婚者だから! 手を出したら犯罪よ!」

真帆【今時の若い子は大人をからかって!!】

顔を真赤にしてプンプン怒ってる真帆

爽汰「犯罪って。真帆さん結婚してたんでね。でも指輪してなくないですか?」
くくく、と肩を震わせて笑う爽汰

真帆「仕事柄指輪は外してるのよ。お客様のお顔に触れる時に当たったりしないようにね」
爽汰「なるほど。だから早く帰りたかったわけか〜、納得。こんな美人な人がフリーなはずないですもんね」
かあーっと真帆の顔がさらに赤くなる。
爽汰が真帆の顔を覗き込み、真帆はパッと顔を逸らす

真帆「……じゃあ、帰るから。連れ出してくれたことには感謝してるわ。もう会うこともないだろうけど、さようなら」

顔を真っ赤にして、口をムッとつむって
カツカツとヒールの音を鳴らして早足で帰る真帆。

爽汰「さようなら真帆さん」

真帆の帰る姿をさみしげに見つめる爽汰
ポケットからスマホを出し、画面には
早く来て
と表示されている。(名前部分は見切れて誰かわからない)

爽汰「行くか……」
すごく寂しげな顔


■高田家玄関

真帆「ただいま〜って電気もついてないし、誠司まだ帰ってないんだ」
パンプスを脱ぎながら

パチンと部屋の電気をつける真帆

真帆【部屋ん中あっつ。エアコン入れよ】
エアコンのスイッチを押す
真帆【お風呂入ろ】

■浴槽に入っている真帆
ぼへ〜っとしてる。
真帆【何も言わずに帰ってきちゃったけどひかりちゃん大丈夫だったかな……っていい大人なんだから大丈夫よね!】

ぱっと爽汰の近づいてきた時の綺麗な顔を思い出しちゃう。

真緒【な、なに今の!!!ヤダヤダヤダヤダ!】
バシャバシャとお湯で顔を洗う真帆

〈あんな風に優しく頬を触られたのっていつぶりだろう〉
頬を触られた時の回想

〈男の人でもあんなにスラッと真っ直ぐで綺麗な指の人もいるんだな。〉

真帆【ってなに考えてるのよ】
すんっと真顔になる真帆。

〈あれ? 誠司の指ってどんなんだったっけ? すらっとしてる指? ゴツゴツ骨張ってた?〉

真帆【お、思い出せない……】
ガーンとなる真帆

〈頭を撫でられることはあってもいつからだろう、その手で私の身体に触れなくなったのは。
頭を撫でてもらった時、彼の手は大きくて温かくて安心感を与えてくれる。
けれど、頬に触れられたことは? 他に触れられた場所は? 思い出せないほど昔だ。〉

真帆「はぁ……」
真帆【素直にセックスしたいって言ってみようかな……】
ぶくぶくぶくと沈む真帆

■オシャレなバー
カウンターの端で直人(誠司の高校からの友達)と呑んでいる誠司。
はぁ、とウイスキーの入ったグラスをカランと揺らす。

直人「んだよ、お前から連絡あったから何かと思えば、なんか相談事なんだろう?」
誠司「よく分かったな」
直人「そりゃお前、何年の付き合いだと思ってんだよ」
誠司「高校からだからもう十年以上か。実はさ、結婚もしてて子供もいる直人に聞きたいことがあるんだけど」
直人「ん? なんだよ?」
落ち込んでいる誠司の顔をみる直人。

誠司「誰にも言うなよ?」
しんけんな顔で直人をみる。

直人「お、おう」
誠司「俺さ、EDかもしれないんだよね」
直人「……まじで?」
めちゃ驚いてる直人
自分で言っておいて落ち込む誠司

誠司「病院とかには行ってないけど、多分。てか病院にいって認められたら多分立ち直れなさそう。まだ32なのに、俺」
ごくんとウイスキーを飲む誠司

直人「なんか心当たりとかないのか? ほら、メンソールのタバコ吸うとインポになるとか聞いたことあるぞ」
誠司「インポって言うなよ……それに俺タバコ吸わないだろ。でも多分理由はなんとなくわかってるんだよなぁ」
直人「なんだよ?」

はぁとため息をつく誠司。

誠司「なぁ、子供ってかわいい?」
直人「子供? そりゃもちろんすんげぇ可愛いよ。寝てるときなんて天使みたいな寝顔だぜ?」
めっちゃ幸せそうな直人の顔

誠司「真帆も凄い子供欲しがってるんだよ。多分だからかな、凄いセックスが子供を作るための義務的行為に思えちゃってさ」
直人「おまっ、随分デリケートな息子さんですこと」
誠司「ちゃかすなよ。俺本気で悩んでんだからよ」
直人「悪い悪い、確かに男ならそりゃ悩むよな。真帆ちゃんは知ってんの?」
誠司「知らない、てか恥ずかしくて言えないよ。もうずっと真帆としてないし……」
直人「まじで? レスじゃん。お前どうやって処理してんの?」
誠司「勃たないんだからしてない……って、そんなことはどうでもいいだろうよ」
はぁとため息をついた時、誠司の後ろを歩いていた女がよろけて誠司にぶつかる。

美玲「きゃっ、ご、ごめんなさい。よろけちゃって、大丈夫でしたか?」
めっちゃ上目遣いで聞く美玲

誠司「大丈夫ですよ。お気になさらず」
クールに対応する誠司。すぐにカウンターのほうを向く。

美玲、少し歩いてから振り向いて、誠司の方をみてニヤリと口角を上げる。
美玲「……みぃつけた♡」


■誠司帰宅途中路地

誠司【あー、結構呑んじゃったな。結局直人に相談しても解決策は出てこないし。真帆、起きて待ってるかな……】

なんだか人の声が聞こえる

美玲「――っなしてください!」
美玲が男に腕を掴まれている。

誠司【ナンパ、にしては凄くいやがってる、よな】
助けようと美玲の方に向かうと美玲が誠司に気づき、男の腕を振り払って誠司の元へ駆け寄って来た。そして抱きついてくる。

誠司【え? なに?】
驚く誠司。

美玲「話合わせてください」
誠司の耳元で小さく囁く美玲

美玲「もう! 遅いよ! 待ってたんだからね!早く行こう!」
美玲は誠司の手を取って走り出す。

美玲に絡んでいた男(帽子で顔を隠していたけど、この男は爽汰)は走り去る二人を見て、帽子を取りため息をつく。(顔は出さない方がいい)

■誠司と美玲走ってついた先はラブホ前

誠司「ちょ、ちょっと君! 待って!」
はぁはぁ息切れしている誠司にたいして美玲は全く息を切らしていない。

美玲「本当にありがとうございました。さっきのナンパ男しつこくて困っていたんです。さっきバーにいた人ですよね? つい頼ってしまいました。ごめんなさい」
きゅるんっと誠司を見る美玲

誠司【やっぱりナンパだったのか】
誠司「可愛いと大変ですね。じゃあ、俺はこのへんで」
お世辞笑いをする誠司

美玲「待って」
誠司「え? ちょ――っ」
帰ろうとする誠司を美玲がぐいっと引っ張り、超絶濃厚なキスをする。
キスがうまくて、驚く誠司

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