愛されたいと叫ぶ夜

第二話

二話
■真帆職場、ランチ休憩中

カフェで後輩のひかりとランチ中、誠司からラインが入る。
真帆【ん、誠司からだ】

誠司ライン=今日直人に誘われたから飲みにいってもいい? 夕飯俺の当番なのにごめん
真帆ライン=OK。私は適当に食べるから大丈夫だよ。楽しんできて


ひかり「旦那さんですか〜?」
真帆「うん、今日友達と飲みに行くって」

スマホをしまい、パスタを食べ始める真帆。

ひかり「本当先輩の旦那さんってまめですよね〜ちゃんと友達と飲みに行くことも報告してくれて」
真帆「まぁ、確かにまめなのかもね。私なんてしょっちゅう残業になるって事言い忘れたりするもの」
ひかり「わかります、わかります〜! てか今日真帆さん一人時間ってことですよね? たまには飲みに行きません!?」
ウキウキワクワクな感じのひかり
うーんと悩む真帆。

真帆【確かに結婚してからはなかなか飲みにいってないわよね。たまには行こうかな。誠司も遅くなるだろし。きっと、誠司は今日も抱いてくれない……】
【今日も、か】

〈いつになったら私のこと抱いてくれる?〉

ズーンと頭の中はそれだけになってしまい、ハッと我に返った真帆はニコッと笑った。
真帆【あぁっ、すぐに頭の中がやらしいことでいっぱいになって……欲求不満なんだろな……ってこんな事ばっかり考えちゃうから駄目なのよ!】

真帆「よーし、久しぶりに飲みに行きますか!」
無理矢理テンション上げてる感じで

ひかり「わあぁい! 楽しみ〜!」


■オシャレなバー

引いている顔で当たりを見渡す真帆。

真帆「あの、ひかりちゃん。これは一体?」
ひかり「あ、ばれちゃいました? 合コンです! じつは一人女の子で欠員出ちゃって、あはは〜」
真帆「なっ……帰る!」

呆れた顔で引き返そうとする真帆にしがみつくひかり。

ひかり「先輩いかないで〜〜〜私の出会いの場をなくさないでぇ〜〜〜私も先輩みたいなイケメンで優しい彼氏が欲しいんですよぉぉぉお!」

真帆「ひ、ひかりちゃん……」
ひかり「せんぱい〜〜〜」

うるうるした瞳で真帆をみるひかり。

真帆【うぅ……】

■合コンメンバー揃った円形のソファーテーブル イタリアンバー
男4(男全員スーツ)女4

〈来ちゃった〉

青白い顔で席に座っている真帆。
みんな飲み物をオーダーしてあり、真帆の目の前にはビールが置いてある。

真帆【あわわわ、、ひかりちゃんにあんなに頼まれたら断れるはずないじゃないのよ〜っ。
誠司に何も言わないで合コンにきちゃった。誠司、ごめんなさい……】


相手の男A「はい、じゃあ全員揃ったみたいなんで、とりあえず乾杯しましょう!」
男A立ち上がりながら話を進める。

男A「今日の出会いにかんぱーい!」
周りみんな笑って「かんぱーい」とグラスを持つ。

真帆【若い子のパワーが、凄い……】
真帆「か、乾杯」
真帆も遠慮がちにグラスを持って乾杯し、少しビールを飲む
真帆【居心地わっる……】
相手の男A「じゃあ、自己紹介ってとで俺は〜」

続々と自己紹介が始まる。真帆はぼーっとビールばっかり呑んでる。
真帆【酔ってテンションあげてみたいけど、私……】

〈酒豪なのよ!〉

悔しそうな顔の真帆
真帆【ワイン何本もあけないと酔えない自分って……】

ひかり「デパートで美容部員やってます。ひかりです、よろしくお願いしまぁす」

真帆【わお、随分慣れた感じね。美容部員、確かに化粧品販売員より響きはいいかも】
ほうほう、と感心しちゃっている真帆。

ひかり「先輩、先輩! 次先輩の番ですよ!」
真帆「あぁっ、ごめんなさい。ひかりちゃんと一緒に働いてます高田です」

周りがガヤガヤして笑う。
男A「名字っておっもしろ〜」
男B「てか綺麗じゃね?」

女A「……なにあのおばさん」
女B「しっ、聞こえるよ。ひかりの先輩だって。今日一人足りなくなったから急遽ね」

顔をひくひく引きつらせる真帆

〈聞こえてるっつーの〉

真帆【少ししたら適当に理由つけて帰ろう。合コンは昔からあんまり好きじゃないのよね。あ……でも無理やり合コンに連れて行かれたからこそ誠司と出合えたんだった】
席に座りながらふと昔のことを思い出した真帆。
ビールを両手で握りしめてビールを眺める。

■昔の回想、誠司との出会いは四年前の合コン

真帆が席につこうとしたとき目の前にいた誠司とめがあった。
お互い何かを感じたかのような顔。

真帆【あっ……】
真帆ぽっと顔が赤くなる

〈真っ直ぐで吸い込まれるような漆黒の瞳〉
〈私は一瞬で恋に落ちた〉

和気あいあい皆んながみんなご飯を食べたり、飲んだりしている。
誠司のお箸を持つ姿勢も、食べ方も凄く綺麗。
誠司だけが真帆にはキラキラくり抜いて見える。

真帆【食べ方も綺麗、周りのみんなに気を配って、相手の話をちゃんと聞いてて、聞き上手なんだな】
真帆はついつい見惚れる。

誠司と目が合う。ニコッと微笑む誠司。

誠司「杉山さん、(真帆旧姓)だよね? ちゃんと食べてる?
こっちのもとるからお皿かして」

真帆にお皿を貸してと向かい側から手を伸ばす誠司
ワイシャツをまくった腕と時計がめっちゃ色っぽい。

真帆【わ……】
真帆「あ、ありがとうございます。じゃ、じゃあお願いします」

皿を出す真帆。
誠司がピザやポテトを乗せる。

誠司「はい、どうぞ」
真帆「あ、ありがとうございます」
真緒【あ……っ】

皿を取るときに指が触れる。

〈指先が、熱い〉

真帆のドキドキが止まらない。めっちゃ恋する乙女の表情になる。

真帆【な、なにこれ。心臓が壊れそう】
【でも、意識しちゃってるのは私だけ、か】

誠司はなんの反応もなく、自分の飲み物を飲み始める。
真帆すこししゅんとした表情。

■回想、店のトイレ
洗面所で手を洗いながら鏡に向かってため息をつく真帆

真帆【あの人、誠司さんって言うんだ……でもイケメンなだけあって周りも皆んな誠司さんばっかり見てるもんなぁ。自分だけが意識して緊張しちゃって馬鹿みたい。早めに帰ろう】

手を拭きながらトイレ出ると誠司が壁に寄りかかって真帆を待っていた。驚く真帆

真帆「わっ、誠司さん? どうしたんです? 男性用トイレなら向かい側ですけど、あ! 酔ってます? 結構飲んでましたもんね」

ポンっと手を叩く真帆
誠司はクスクス笑い始める。

真帆「誠司さん?」

笑っている誠司の顔を不思議そうに覗き込む真帆
その瞬間誠司の顔が耳元に寄る。真っ赤に顔が赤くなる真帆

誠司「杉山さんを待ってたんです」

〈鼓膜をくすぐるような甘い声〉

真帆【え……】
小さく驚く真帆

誠司「一緒に抜け出しませんか? この合コン」

耳元から顔が離れ、真っ赤に顔が染まった真帆の目をしっかりと見る誠司

〈真っ直ぐな瞳に吸い込まれる。〉

真帆【あ、あの、そのっ……】
真帆、緊張からか口パクになってしまう。

誠司「杉山さんなんだか楽しそうじゃないから抜け出したいのかなぁって。俺も数合わせで連れてこられただけだから正直帰りたいんだ。だからさ、抜け出すのを口実に一緒に帰っちゃいませんか?」

真帆の表情が硬くなる。

〈心が、なにかに引っかかれたようにズキッと痛んだ〉

真帆【やだ、勘違いしそうになっちゃった。そうよね、こんないい人合コンなんて来なくてもモテるだろうし、彼女だっているのかもしれない。ただ、楽しくなさそうにしていた私を口実に使って帰りたいってこと、か……】

真帆はにっこりと微笑む。

真帆「いいですよ。私も帰りたと思っていたんです。一緒に抜け出しちゃいましょう」
真帆【彼が帰るなら私もいる意味はないし、もう帰ろう】

誠司はぱぁっと可愛い笑顔を見せた。
その笑顔に真帆はドキリとする。初めてみた誠司の青年のような満面の笑み。

誠司「よかった。じゃあ杉山さんの荷物ももってくるから入り口のところでまってて」
真帆「ありがとうございます」

真帆【あんなによろこんで……そうとう帰りたかったんだわ。きっと彼女が家で待ってたりするのかもしれないわね】

〈胸が、痛い〉

真帆は唇を噛み締めた。

■外、歩いてる真帆と誠司

お互いぎこちない表情で駅に向かって歩いてる。

真帆【凄い気まずい。なにか話しかけたほうがいいのかしら。でも、なんて話しかけよう。接客スキルがプライベートでは全く生かせないわ……】

誠司「あのっ」

誠司が真帆の腕を掴んで急に立ち止まる。
真帆驚く

真帆「えっ、ど、どうかされました?」

うつむく誠司。なにかを決心したかのようにキリッとした表情で顔を上げる。
真帆、ドキンとする。

誠司「一目惚れ、なんです。帰りたいっていったのも本当は杉山さんと二人きりになりたかったからで、他の人に杉山さんを捕られたくないって気持ちで先走ってた。好き、なんです。俺と付き合ってくれませんか?」

真帆じわじわと涙顔になり、満面の笑みで「はいっ」と返事を返す。
二人で恥ずかしそうに、キラキラした表情で向かいあっている。

■回想終わり、いつのまにか隣の席に男の子がいる。

真帆ビールをみつめて、少し笑っちゃう。

真帆【本当、あの時合コンに行ってなかったら誠司と出合えてないし、ひかりちゃんにもいい出会いがあるといいな】

爽汰がいつの間にか真帆の隣に座っている。

爽汰「真帆さん」
真帆の耳元で名前を呼ぶ爽汰


真帆「ひゃあっ、だ、誰!?」

爽汰「誰って本当ひどいなぁ。どんだけ合コンに興味ないんすか。真帆さんの向かい側に座ってた爽汰です」

笑って真帆の顔を見る爽汰

真帆「あ、ああ。ごめんなさい。爽汰くんね」

苦笑いして、距離感の近い爽汰にジリっと少し下がる真帆

爽汰「ねぇ、真帆さんの荷物ってこれだけ?」

隣に置いてあったバックを指差す爽汰

真帆「そうだけど」
真帆【どうしてそんなこと聞くのかしら】

爽汰「ねぇ真帆さん、俺と一緒に抜け出さない?」
爽汰が真帆を見て目が合う。

真帆「え? 抜けるって」

爽汰が真帆のバックを持ち真帆の手を取って立ち上がる。

真帆「ちょ、ちょっと!?」
あわあわする真帆

ニヤッと笑う爽汰。

爽汰「俺と真帆さんは二人で抜けまーす!」
真帆「はぁ!? ちょ、ちょっと!」

有無を言わせずに爽汰は真帆の手を引き店の外に出た。
残された人たちががやがやしてる。

〈勘違いされたら困るんですけど!?〉

ひかり「せ、先輩!?」
ひかりも驚いてる
真帆【ひかりちゃぁぁあん】

■店の外、夜道

手を引かれて店を出てきた真帆。

真帆「ちょっと、爽汰くんだっけ!? 離してって!」

怒った顔でぶんっと腕を振って爽汰の手を払う真帆

爽汰「無理やり連れ出しちゃってすいませんでした」
ペコリと頭を下げる爽汰

爽汰「俺あんまり今日の合コン乗り気じゃなくて、そしたら真帆さんもそう見えたんで合コンを抜ける口実に遣わせてもらっちゃいました。すいません」

ヘラっと笑い、いさぎよく言い切った爽汰
あっけらかんとする真帆。次第に笑いがこみ上げてくる

真帆「ははっ、あははっ、、どんだけ素直なのよ。でも正直助かったわ。私も今日が合コンだなんて知ってたら来なかったもの。ありがとうね」
「じゃあ、もう会うことは無いと思うけど、今日は本当に助かったわ。さようなら」

くるっと向きを変えて真帆が帰ろうと一歩踏み出した瞬間に爽汰が真帆の腕を掴んで呼び止めた。

爽汰「真帆さん、待って!」
真帆「えっ……」

ぐいっと引っ張られて、向かい合うと爽汰の握っていない方の手が真帆の頬に伸びてきた。
爽汰はキスをする直前みたいな優しく艶っぽい顔で
真帆は驚いて声も出ない状態。

真帆「っ――」
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