クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
それでも父の下で働いていた俺だったが、とうとう結婚まで決められそうになり、藤堂を出て友人と起業した。

その時、怒りをあらわに勘当するとさえ言ったのを、もう忘れたのだろうか。
藤堂の名前がないところで一から始めるのは苦労したが、友人や社員に恵まれ軌道に乗ってきたところだ。

今それを止められるわけにはいかない。

「もう少しだけ時間をください」
言葉を絞り出すように言った俺に、父はかなり大きなため息をついた。

「三カ月だ」

「は?」

「それだけしか待たない。三カ月の間に私が満足する結果、そして結婚相手を決められなければ、私の決めた通り西園寺のお嬢さんと結婚をして、今のお前の事業も藤堂の傘下に入れる」

「な!」
具体的な期間を言われ、これはもう父の中では決定事項なのであろう。

反論したい気持ちを耐え、ギュッと拳を握りしめた後俺は大きく息を吐いた。
「両方とも必ず手に入れて見せます。社長の思い通りにはなりません」
あえて父ではなく社長と呼んだのは、せめてもの反抗の意思表示だ。俺を跡取りとしか必要としていないのはわかっている。

その時、俺は一人の女性の顔を思い浮かべていた。彼女しかいない。



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