クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
その場で動かない私に、凛久さんは「瑠璃」と名前を呼ぶ。

車の中に座っていてもどうしようもない。のろのろと車を降りて何も言えないまま家へと戻った。

玄関で靴を脱ごうとするも、こんな気持ちのまままた凛久さんと、偽りの結婚生活をできるのだろうか。
何も言わない凛久さんに、やはり彼の私じゃダメだったと、役立たずだと思っているに違いないという考えが浮かぶ。

私なんか、凛久さんにふさわしくない。彼の幸せを奪ってしまっているのは私だ。
初めて会った日から、好きだった。だからこんな話に喜んで乗ってしまった私の罪だ。

優しい凛久さんはきっと自分からは言えないと思う。

「瑠璃、家に入……」
これじゃあいけない。そう思いで彼の言葉を遮って口を開く。

「凛久さん、やっぱりやめましょう。こんな結婚間違ってます。家の借金は一生かかっても……」

こんどは凛久さんが私の言葉を遮るように、ドンと玄関の壁に押し付けた。
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