クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
瑠璃もかなり俺に心を開いてくれていると思っていたのに。

やっぱり無理だったのか……。

手を握ったまま、ギュッと俺は目を閉じる。
自分のものにしてしまえば、瑠璃は留まってくれるのではないか。そんな卑怯な思いから迫り、怖がらせた上に、役目だからとまで言わせてしまった。

こんな俺は最低だ。
瑠璃を思えば、手放してやるのが正しいのだろうか。でも、まだ途中だ。瑠璃の家の事業もこのままではまた数年後には同じ状況になってしまうだろう。

「凛久」
後ろから小さな声で呼ばれ俺は振り返った。

「雅也、悪い。あの後大丈夫だったか?」
 事情を知っている雅也の機転の利いた対応で、俺はあの場を離れることができた。

 本当は駆け寄って名前を呼んで、俺の妻だとみんなに伝えたかった。しかし、それを瑠璃は望んでいないと思う。

彼女の隣で佐野が親し気に話していたのも、気になって仕方がなかった。
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