突然ですが、契約結婚しました。
「早いな。今日、半休やろ」
「うん。でも、目覚めたから一緒に朝ご飯食べようと思って」

洗面所に顔を洗いに行き再びリビングに戻ると、真緒さんがトースターにパンを並べているところだった。
特に家事の役割分担は決めていないけど、朝ご飯の準備は真緒さんが担ってくれることが多い。代わりに、帰宅後の諸々は先に帰ることが増えた私がこなすことが大半だ。
家事負担の偏りを気にしてくれる真緒さんだけど、土日に多く担ってくれたりもするので気持ち的にはむしろ楽をさせてもらっている。

「コーヒー飲む?」
「うん。自分で淹れるよ」
「いいから。座っとき」

キッチンに足を向けたけれど踏み入れる前に追い出されてしまった。渋々リビングに戻り、席につく。
コーヒーメーカーで淹れた真緒さんのコーヒーとは違い、私が飲むコーヒーはスティックのインスタントだ。若干の物足りなさは感じるものの、仕方がないのでしばしの我慢。

「パンはジャム? ピーナッツバターもあるけど」
「はちみつマーガリン!」
「好きやなぁ」
「他人事みたいに言って。真緒さんもでしょ?」
「バレたか」

マグカップに口をつけつつ、パンが焼けるのを待つ真緒さんとカウンター越しに言葉を交わす。
カウンターに乗せられたマーガリンとはちみつをテーブルに下ろしたタイミングでパンが焼けた。パンを乗せたお皿を受け取り、真緒さんもテーブルの向かい側に腰を下ろした。

「今日の検診、何時からやっけ?」
「10時30分の予約。そろそろ性別わかる頃じゃないって、昨日お母さんに電話したら言われた」
「ほんまに? 仕事してる場合じゃないやん、そんなん」
「わかったらすぐ教えてほしい? それとも、ジェンダーリビールで知りたい? ほら、あのケーキの中身とかで性別わかるやつ」
「んー。悩みどころやけど、やっぱ待てんな。帰ってきたら、一番に知りたい」
「あはは、了解」

慣れた手付きでパンの表面にマーガリンとはちみつをたっぷり塗ってから、私達は揃って手を合わせる。食卓に並ぶマグカップは、以前私が使っていたものが割れたタイミングでペアのものに買い替えた。

「いただきます」
「いただきます」

いつもと変わらない朝。いつもと変わらない光景。
お酒の勢いのまま、互いの利害が一致して始まった仮初の日々は、時間と思いを重ねて本物になった。

それでも目まぐるしく過ぎ去っていく毎日だけど、そこには必ず大好きな人の姿があって。
それだけで強くなれることを、私は結婚して初めて知った。前に進む方法を教えてもらった。

かけがえのない日常を抱き締めて、これからを生きていく。
これからもずっと、愛おしい毎日は続いてく。


(了)


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