どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~


「あ、あの~、小久保さん、何かとよろしくお願いします」


佐竹さんが、探るように私にそう言ったので、

「いろいろと大変かと思いますが、応援してます」

と答えると、アイコンタクトで、ありがとうという風に合図をした。




【明日には帰れると思う】


夕方に届いたそのメールに私の胸は高鳴った。

と、同時に吉岡先輩とのことを聞くか聞かないか、どうすればいいのかわからなかった。


本気で好きだったと思う。

いつのことなのか、期間はどれくらいあったのか、詳しくはわからない。

吉岡先輩にだけは、圭史さんとの関係をいつか話したかった。
相談に乗って欲しかった。

でも……あの話を聞いてしまったあとでは難しい。



「小久保、来週から研修でピチピチの子が来るらしいよ」


戻ってきた吉岡さんはクールミントのガムの香りがした。


「新卒の女の子ですか?」

「それが、ピチピチの男の子なのよ~!嬉しいわ。もう、佐竹もピチピチしてないしね」


いつもの吉岡先輩に戻っていて、なんだかホッとした。


「ピチピチじゃなくてすいませんね。お互いもうカサカサですからね」

「ちょっと、佐竹。誰に言ってんの?こんなみずみずしい女に向かって、カサカサとかよく言ったな」


言った後に、ちょっと照れくさそうな顔をしたのを佐竹さんは見逃さなかった。


「ある意味、みずみずしいっすよ、吉岡さんは」


ニヤリと笑った佐竹さん。

私はその場にいていいのかわからず、立ち上がったけど、吉岡先輩に腕を掴まれた。


「逃げないでよ。ほんと、あいつむかつく!」


ジロリと睨まれた佐竹さんは、昨日とは別人のように素敵に見えた。


ずっと好きだったんだね。

こうしてここで言い合ったりしながら、どんどん愛が大きくなっていたんだなぁ。




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