どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~


「どうして私を選んでくれたの?」

私の質問にかぶせるように

「どうして俺を選んでくれたの?」

と言ってくれた圭史さん。



顔を見合わせて、クスクスと笑う。


「理由なんてわからない。好きってそういうもんだろ?」

「うん、そうだね。でも、私なんの取り柄もないし、不思議なの」

「万由のかわいいとことか優しいとことか好きだけど、かわいくて優しい子なんて山ほどいる。特に社長なんてやってると美人でモデルみたいな女性ってわんさかいるんだよ。だから、俺は外見とかそういうので選んでると選びきれない。だから、自然にちゃんと見る目が養われたのかもしれない」

目を合わせて、穏やかに微笑む圭史さん。
片方だけあがる口角が好き。

「だってさ、秘書課とかたいがい綺麗な子が来るけど、そんなのにいちいち反応してたら俺仕事どころじゃなくなるだろ。それに、綺麗な子なんてたくさんいて、ひとりになんて絞れなくて、何股もかける最低な男になっちゃう」


「ふふ、そうだね」


「何が言いたいかわかんなくなってきたけど、俺は理由はわからないけど、入社当時から万由のことを気にしていて、笑顔で挨拶されるたびになんだか嬉しかった。この子のこと知りたいなって思った。社長だからとか関係なく、俺を見てくれてるってわかったから」


そう言って、優しいキスをして、唇をつけたまま目を合わせる。


「仕事で辛いことがあった時、お前に会えると嬉しかった。だからあの日も、会えるかなって思って、営業部に顔を出した」



残業していたあの日、圭史さんと初めてたくさん話をした。


「正直に言うと、俺はもう恋愛なんてする気はなかった。吉岡の後も、いい感じになりかけてはうまくいかなかった。それは全部俺の自信のなさ、守ってくれるって思わせることができなかったから。でも、万由と話して、俺の弱い部分見せて、居心地が良すぎて……この子を好きになりたいって思った。傷つけちゃうかもしれないし、辛い思いもさせちゃうかもしれないけど、俺が守るから、一緒にいてほしいって……」

圭史さんの言葉が、ものすごく心に響く。

「なんか俺、すげーこと言ってるな」


伝わるよ、気持ち。

社長だもん。
2代目の社長で、家のことを第一に考えないといけないのは仕方ないし、お見合い話がたくさんあったり、自由に結婚できなかったりってことは……想定内。




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