どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
Love15   吉岡先輩の真実
Love.15 吉岡先輩の真実



情事の余韻に浸りながら、ソファで圭史さんの肩に頭を乗せていた。


「……明日、親父と一緒に例の下請け会社に行くことになってる。その前に俺が、決めなくちゃいけない。いろんな根回しをやってきたつもりだけど、親父が認めるかどうか」


「明日なんだね。少しは相談役に話したの?」


「ああ、何度か。でも、経営不振を理由に、違う会社に変えようとしていて。でも、その下請け会社は今は赤字だけど、新しく出資している事業が成功すれば、持ち直すことはわかっていて。その取引先にも、今後のことを聞いたりした。俺は自分の会社の社員を守らないといけない立場だから、情だけで動くわけにはいかない。しっかり裏付けがないと、決められないしな」

私の肩に回されていた圭史さんの手に力が入る。

私の知らないところで、圭史さんはいろんなことを考え、動いていて、その中の一部しか私は知らない。



「明日は、遅くなるけど連絡するよ」

「うまくいくこと、祈ってるから」

「今週はもうゆっくり会えないかもしれないけど、来週はどこか行こう」


どこに行きたいか考えておいてと言ってくれたけど、私のために無理しているじゃないかと心配になった。




翌日。
電話で、圭史さんが守りたかった下請け会社との取引が打ち切られたことを聞かされた。


その会社は私達営業部にとってもなじみのある会社だったし、何よりも圭史さんを育ててくれたと聞いていたから悲しかった。

俺の力不足、と元気なく言った圭史さん。

精一杯頑張って、守ろうとしたこと、わかってくれていると思う。
でも、結果がすべてなんだと圭史さんは言った。

もう一度、何かの形で仕事ができるように頑張る、と言い、私はただ頑張ってとしか言えなかった。

悔しいだろうし、悲しいだろうし、私にはわからない思いがたくさんあるだろう。


「会いたいけど、今会ったら弱音吐いちゃうから、今は頑張るよ」

「……弱音吐いていいんだよ」

「うん。ありがとう」


少し寂しい気持ちで電話を切った。


時々感じるこの、世界が違うんだ、という気持ち。


広くて大きな世界で泳ぐ圭史さんと、その中の小さな水槽で泳ぐ私。

外の世界は見えるけど、そこから出ることは出来なくて。









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