記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
「え?」

思ってもなかった西川の言葉に思わず、目が丸くなった。

「去年、雨で会社の飲み会が中止になってね、私が預かってたんだけど、邪魔だから処分したいの。そのまま捨ててもいいんだけど、せっかくだしね」

「そうなんですね、じゃあ……」

西川は、手際よく蝋燭に、梵字の書かれたマッチ箱からマッチを取り出し火をつけた。真っ暗だった、辺りに明かりがほんのり灯る。

「はい、どうぞ」

西川は紙袋から、花火を取り出すと、文香に渡し、自分も花火も手に持った。

互いに、蝋燭に花火の先端をかざすと、小さな火の粉から、すぐに火花が飛び散る。

「こ……し……たの?」

ジュッと燃え上がる花火の音で、西川の声がよく聞こえなかった。

辺りは白い煙に包まれて、此処ではないビジョンが映し出される。

「嘘……」

文香は、目を見張った。


目の前のビジョンには、文香と黒髪のあの子が映し出される。

『はい、(ほたる)ちゃん、ホットミルク』

『有難う、文香ちゃん』

やがて、ホットミルクを飲み干した蛍は、ゆっくりと瞳を閉じる。

眠る黒髪の女と、文香の元へ男がやってくる。

『蛍、俺の事、本当に好きだって?』

『えぇ、大樹(たいき)が好きなのに、この子清純だから、素直に言えないみたいよ』

『初めては大樹がいいって話してたわ』

『有難うな、文香には感謝しかない』


誰にも知られることのない秘密……。
誰にも知られちゃいけない。あの日、あの子を大樹に襲わせた、自分の罪が目の前に浮かんでは消える。

「何なの……これ……」 

思わず口を覆う文香を、西川がニヤリと笑った。

「まだまだ、これからよ、秘密主義の波多野ちゃん」

花火は、隠された秘密をゆっくりと暴くようにビジョンを写し続けていく。

ビジョンには、大学の頃の文香と愛瑠が映し出されていた。

『アンタでしょ?大樹を、そそのかして、あんな事……』

『大樹が、あの女が好きだって言うから協力してあげたの……』

『アンタの為でしょ?大樹に振り向いて貰えないからって、あの子を襲わせるなんて、異常よ!』

『異常?それなら愛瑠のブラコンも異常だけどね。好きなんでしょ、大樹のこと、男として』

『ふざけないで!』

愛瑠は、文香を見つめながら、静かに言葉にした。
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