隣のブルーバード

第5章 裕生15歳―24歳、もうひとりの9年間

 高校1年の夏休み。

 もう夜の9時近くになるのに、沙希の部屋の明かりはまだ灯らなかった。
 
 たしか、今日は部活の試合があるとか言ってたっけ。

 それにしても遅い。
 なにかあったんじゃないのか?

 嫌な予感にとらわれ、思わず外に様子を見に行こうかと思ったそのとき、沙希の部屋に、待ち望んでいた明かりがついた。

 ほっとしたのもつかの間。
 すぐに、沙希の言葉に打ちのめされることになった。

「裕生、聞いて! 好きな人ができたー」
 第一声がそれ。

 ちぇ、なんだよ。
 帰りが遅いと思って心配してたら、いきなりなんの報告だよ、まったく。「今、宿題中」
 むしゃくしゃして、おれはすぐ窓を閉めた。

< 43 / 68 >

この作品をシェア

pagetop