隣のブルーバード
 でも次の日の帰り。
 お互い部活が休みで、電車が一緒になって、結局、延々と話を聞かされた。

「2年生の先輩で、田所さんっていうんだけど、もうかっこよくて、優しくて、バタフライもすごく速くて……昨日もぶっちぎり優勝したんだよ」
 沙希が興奮すればするほど、おれの心はどんどん冷めていく。

「で、その人が『安井は頑張り屋だよな』だってー」 
 にやけまくっている沙希の顔を冷たく見下ろす俺。

 ったく、人の気を知らないで。

 幼なじみの沙希。
 この世で一番好きな沙希。

 それが……好きな男ができただって?
 全身から力が抜けていきそうだ。

 中学に上がったころから急に、沙希が眩しく見えるようになった。

 制服のせいだったかも知れない。
 急に大人っぽくなった彼女にドギマギした。
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