隣のブルーバード

第7章 わたしのブルーバード

 裕生の下宿を訪ねるのは、もちろんはじめてだった。

 迎えに行くから、という裕生に「いい。ひとりで行く」と断った。
 駅で会ってしまったら、告白のタイミングを逃してしまいそうだったから。

 幸い、わかりやすい道だったので迷うことなく到着できた。


 5階建てのいわゆる学生マンションで、裕生の部屋は3階。
 まだ、その3階辺りの壁面がすこし煤けていて、あのときの火事の痕跡を残している。

 
 エレベーターに乗って、3のボタンを押したときから、動悸がしてきた。

 そういえば、自分から「好き」という気持ちを伝えるなんて、初めてだ。
 相手の気持ちはわかってるとはいえ、どうしてもソワソワしてしまう。

 
 表札を確かめてベルを鳴らすと、裕生は待ち構えていたんじゃないかと思うほど、すぐに出てきた。

「裕生」
「入れよ」

 さりげなく装っているけれど、裕生の顔もいつもよりこわばっている。

 緊張しているのが伝わってくる。
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