大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「この子が子どものころのことだけど。

 私が着ていく服を迷ったとき、どっちの服がいい? って見せたら。

 必ず、私がやっぱりこっちかなと思ってる方を言うのよ」

「そ、それは……」
と言いかけ、行正はやめた。

 その一見表情のない横顔を見ながら咲子は、今なら、この人の心が読めるな、と思っていた。

 何故なら、おそらく自分と同じことを考えているからだ。

『それは単にあなたの機嫌をとるのが上手かっただけでは……?』

 なにせ、この母親、気分屋だからな。

 なにを契機に怒り出すかわからないから。

 いつもビクビクしてたもんな。

 そう思いながら、咲子は白状した。
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