大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 会話は相変わらず、続かないけど。

 この人、もともと無口なんだろうから、ずっとこんな感じなんだろうな。

 咲子がそう思ったとき、向こうから、品のいい老夫婦が歩いてきた。

 ステッキを手にした老紳士と落ち着いた色の着物を着た夫人。

 なにも話してはいないが、ふたりともニコニコして楽しそうだった。

 いいなー。

 そうか。
 あんな風になればいいのか。

 会話しなくても、二人でいて違和感のない感じに。

 まあ、……すごく時間かかりそうだけど。

 行正もそちらを眺めているようだった。

 もしかして、行正さんも同じことを考えているのかも?
と思いはしたが。

 修行のなっていないこの新妻は、沈黙に耐えられず、しゃべってしまう。

 いや、行正に向かってくだらないことを話せるようになっただけ、進歩なのかもしれないが。
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