妖怪ホテルと加齢臭問題・その後の小話・オトナの現実と何とかの糸

紅葉の意味

久遠は、
天音の手首をそっと放して、
膝の上で、両手の指を組んだ。

「本当はあの旅館の査定は、
近藤の仕事だったんだ。
でも、近藤の娘が、熱を出して、
無理って、言ってきて・・」

天音は少し驚いて、聞いてしまった。
「近藤さんって、
お子さんがいるんですか?」

あの、クールで仕事のできそうな近藤が、既婚者だったとは・・
久遠は、天音の顔を見て、微笑んだ。

「3才と5才の女の子がいて、
すごくかわいいんだ。
溺愛しているよ。
暇があれば、スマホの待ち受け
見て、二ヤついているし・・」

それから、少しうつむいて、
両手を見つめていた。
「俺は確かに、色々な女の子と
付き合って来た。
遊んできた。
でも、日本人の女の子とは、
付き合おうとは思わなかった。」

空が暗くなり始めて、駐車場の
街路灯の明かりが、点いた。
久遠も天音も、
視線を交わす事もなく、
正面の施設の建物を見ていた。
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