妖怪ホテルと加齢臭問題・その後の小話・オトナの現実と何とかの糸
天音は、ゆがんだ泣き顔を見られたくなく、急いで立ち上がった。
「そんなの、無理ですよね。
だから、この話は、なかった事にしてください」

天音は、早口で言いながら、
考えていた。
私は、この大型わんこが好きなのだ。

迫られて、尻尾をブンブンふって、じゃれつかれたら、拒否は
できない。

でも、オトナの現実に合わせなくてはならない。
話は、これで終わりだ。
決着はついた。

「ちょっと、待てよ、
俺の話を聞いてほしい!」

久遠は低い声で、
天音の腕をつかみ、強制的に座らせた。

「本当は、あのもみじの木の下で
言うつもりだったんだ。
結婚について・・・」

天音の心臓が跳ねて、腕に力が
入った。
が、久遠に手首をつかまれて、
固まった状態だった。

「君と出会ったのは、運命だと思う。
日本語で「何とかの糸」っていうよね。」

赤い糸・・・
天音はつぶやいた。
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