青い星を君に捧げる【零】
もう男性たちは目前まで迫って来ているのにぺらぺらと口は動くのに体が動いていない彼に私は大声で言った。


それからの佑真は動きが早かった。瞬きの間に迫っていた男性たちは地に伏せ、彼は服に付いた塵を払っている。


これが白虎総長、月橘。


東西南北の頂点に立つ4つの暴走族の中でも群を抜いて強いと言われる白虎のトップ。


この人が、佑真が(カシラ)なのだと脳に焼きつかれた。


荒くれ者たちを束ねるカリスマ性、有無を言わせない強者の雰囲気はまさに上に立つ者の素質が完璧に備わっている。


「波瑠さん?大丈夫ですか」


じっと黙って彼を見つめていたからか心配そうな声が聞こえた。


「また助けられちゃったね。ありがとう」


「いーえ!それに対価をくれるってあなたが言いましたから」


とりあえず静かな場所に行きましょう、と再び私の横に並んだ佑真は繁華街の真ん中を歩き出す。遅れを取らないように見失わないように私も彼の背中を追った。


「それにしてもなぜ波瑠さんがあんなところに?夜だし、女の子1人じゃ危ない場所ですよ」


喧騒を抜け出し、しばしば人の流れが無くなった所まで来ると彼が口を開いた。夜の匂いが私たちを包む。
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