恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「誰から?」
「峯岸百合だよ」
 こいつがニヤニヤ顔で告げたのは亡くなった親友の恋人の名前だった。
「峯岸……」
 昨日お昼に会社を抜けて杉本の墓参りに行ったら、峯岸百合に会った。
 杉本の命日に墓参りに行くと、必ず彼女に会う。その後、故人を偲びながら酒を飲むのだが、昨日も同じだった。
「恋人の遺品の中からお前宛ての手紙が出てきたから渡したいってさ」
 昨日墓参りの前に杉本の家にお線香をあげに行って形見分けをしてもらったらしいから、その中に俺宛のものがあったのだろう。
「そういう大事なことは最初に言うように。今日の昼の予定空いてたな。どこかランチ予約して彼女に連絡しておいて」
 拓真に命じると意外そうな顔をされた。
「自分で連絡しないのか?」
「親友の恋人だったけど、俺と親しいわけじゃないからな」
 杉本の命日に一緒に酒を飲むが、普段からそんなに親しいわけではない。
 だから、俺の名刺は渡してはあるが、プライベートの番号は教えていないし、彼女の連絡先も知らない。
 
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