恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 昔社内報で顔写真を見た記憶はあるが、どんな方か忘れてしまった。
「一見人のいいじいさんに見えるけど、財界では『雷帝』と呼ばれて恐れられてる」
 雷帝と聞くだけで震え上がりそう。
「すごい怖い人なんだ」
「まあ仕事には厳しい人だな。俺には優しいじいさんだけど」
「それは絢斗が有能だからです。私が会ったら怖くて石になるかも」
 自分の肩を抱いてブルッと震え上がる真似をしたら、彼がとんでもない発言をした。
「正月にうちの親父とじいさんに会ってもらうから」
 え? 社長と会長のダブルで?
「いやいや、無理だよ。社長と会長に会うなんて心の準備ができてない」
 社長に会わせるという話は前から聞いていたけど、やはり過去の経験からいって私生児で貧乏人の私が受け入れてもらえるか不安だ。
 しかも歩と絢斗の家にお邪魔している。
 いい印象を持たれるとは思えない。
 金目当ての女だって思われたらどうしよう。
「だったら、いつならいいのかな?」
 

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