恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
菊池さんが退出すると、一条くんが私の方に目を向け、ドッドッドッと心臓がさらに大きく音を立てて呼吸が苦しくなる。
 一条くんとふたりきりになり、緊張で頭がおかしくなりそうだった。
「説明してもらおうかな。どうして今朝なにも言わずにホテルからいなくなった?」
 漆黒の双眸が私を見据える。
 目を逸らしたくても、彼の瞳に捕縛されて出来ない。
「それは……なにも話すことなんてなかったから……です」
 しどろもどろになりながら質問に答えるも、彼は不服そうな顔をした。
「お金も受け取っていないのに?」
 気が動転していて彼から逃げることしか考えられなかった。
 フランス料理を食べていたはずが、目を開けたら下着姿で彼とベッドで寝ていたのだからパニックになるのは当然。
 でも、一条くんはそうは思わないだろう。
 レンタル彼女の仕事をしている上に、本当に寝たかどうかはわからないけれど、彼と一夜を共に過ごしてしまったし、身持ちの軽い女だと思っているに違いない。
 
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