恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 つまり、菊池さんは昨夜私が一条くんと一緒だったって知ってるということ?
 それにしても、どうして私がここで働いているのがバレたのか。
 原油外航部と同じ三十九階にある副社長室が見えてくると、心臓の鼓動がますます早くなった。
 ああ、マジックみたいにここからパッと姿を消せたらいいのに。
 そんな非現実的なことを考えて現実逃避するが、この状況は変わらない。
 菊池さんが副社長室のドアをノックし、部屋に入ると、私の背中を押した。
「ボスの要望通り連れてきたぞ」
 まるで神への生贄のように一条くんに私を差し出すのはやめてほしい。
 副社長室は二十畳くらいあって、右奥にあるお洒落な執務デスクに一条くんが座っていた。
 左側には高級感のあるソファセットが置かれ、窓からは東京の摩天楼を一望できるが、その景色を楽しむ余裕は全くない。
「ご苦労だった。お前は俺が呼ぶまで下がってて」
 パソコン画面を見ていた一条くんが顔を上げて言葉をかけると、菊池さんは顔をニヤニヤさせた。
「へいへい、了解」
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