恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
3、彼女の事情
「一年間、美鈴と専属契約をしよう。また家族に見合いを勧められるだろうし、新たな恋人役を探すのは手間だからね」
「お断りします。他を探してください」
 高校時代の同級生―芹沢美鈴を俺の執務室に呼び出して提案するが、彼女は首を縦に振らなかった。
 高い金額を提示しても美鈴は拒否する。
「歩がいるから専属契約は受けられない? 寝言で歩って言ってたよ。美鈴の恋人?」
 頑なな彼女に『歩』のことを尋ねたら、彼女がこれでもかっていうくらい大きく目を見開いて叫んだ。
「あっ!」
 顔を青くしながら腕時計を見て、彼女は俺の執務室から出ていこうとする。
「もう時間がない。迎えに行かなきゃ!」
 悪い恋人に会わせたくなくて、慌てて彼女の手を掴んだ。
「待って! まだ話は終わってない」
「待てません! 保育園が閉まっちゃう!」
 必死に俺から逃げようとする美鈴の口から放たれた言葉を聞いて俺は固まった。
「え? 保育園?」
 事の発端は俺の見合い。
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