断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる

「そういえば、わたくし、猫を飼い始めたんですのよ。あの、皇城へも猫を連れて行ってもいいでしょうか」
「ああ、勿論。どんな子だい? 僕も見たいな」
「ルナという名前ですの。部屋にいるはずなので、どうぞ入ってください」

 皇城へ連れて行っても良いと、即答して貰えてよかった。
 ずっとバルコニーにいたので、部屋に入ると、いつもベッドで丸まっているルナが見当たらない。

「ルナ? どこにいるの?」
「お出かけ中なのかもしれないね」
「夜はこの部屋からいつも出ないのだけど……。また戻ってくるかしら」
「ははっ、猫らしいね。でもまぁヴィーを独り占め出来るからいいけど」

 ふとジャックさまと視線が重なると、逃げ出したくなるほどの熱っぽい視線に、蕩けてしまいそう。
 わたくしの肩に、ジャックさまの手が添えられて、反射的に目を瞑る。

 唇が離れると、なんだか名残惜しくて、シャツをぎゅっと掴んで、ジャックさまを見つめる。

「だいすきです」

 思わず本音がポロリと出てしまう。何度もキスをしていただいているのに、心臓が壊れそうなくらいドキドキして。よく心臓が形を保っているなと、妙に感心する。

 そしてその後も、たくさんのキスの雨が降り注いだ。

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