処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
「あー…」

軽く歯が衣に掛かったくらいで、バキバキメキメキと変な音がした。同時に爆弾が爆発したかと思うほどの轟音がドゴオオンと響き、わたしはササミフライを咥えたまま縁側から続く庭に視線を向けた。

庭に向けた顔に、正面から爆風を感じた。

ーーーーそこに見えたのは、砕けるブロック塀。タイヤに潰される畑。潰れ去った縁側、掃きだしの窓ガラスが割れて飛び散り、窓枠が面白いくらいに簡単に歪んだ様。
そして、それらを突き破ったトラックの前方部分、一瞬であったが、フロントガラス越しに運転席のおじさんの首がカクンと後ろに反り、ぽっかりと開いた口と開いていない目が見えた。


ーーーーーー居眠り!!


居眠りだったのか、はたまた病気とか何かを避けた拍子とか、原因など何も分からない。
そんなことはどうでも良い。とにかく、トラックが我が家に突っ込んできたのだ。

家が揺れた気がした。ボロいからこのまま崩れ去るんじゃないか。

わたしはササミフライを落とした。

茶碗と箸を持ったまま死ぬのか。これがわたしの最後か。
悲鳴を上げる余裕もない。

そのまま、まっすぐ突っ込んできたトラックのライトで視界が真っ白になった。

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