お嬢様は完璧執事と恋したい
だが彼の余裕たっぷりで子ども扱いするような態度にも、もう怯まない。
「私、巳年生まれだもん」
「……は?」
「ヘビは嫉妬深くて執念深いって言うでしょ? 私も執念深いの。だから振り向いてほしいし、朝人さんを諦めきれないし、構ってくれなかったらやきもちだって妬いちゃうんだから」
朝人のスーツをぎゅっと握りしめて、懇願するように――けれどわがままな命令のように宣言する。それが子供じみていて、歳が離れた彼に釣り合うにはほど遠い言い分であることは理解している。
でもそうまでしてでも朝人の関心を集めたい。ずっと想い続けてきた彼を諦めたくはないし、ついこの間までいないと言っていたのに、邑井家の執事を辞めた途端にモテ始めたらショックも受けるし嫉妬だってする。
歳の差があっても、子ども扱いされても、澪だって立派な女性なのだから。
「執念深くて嫉妬深い、か。――なるほど」
朝人のシャツに掴まったままじっと横顔を見つめていると、彼がぼそりとなにかを呟いた。納得したような、感心したような、同調するような表情と台詞に、澪は一瞬やはりワガママが過ぎたのだろうかと焦ってしまう。
けれど、そうではなかったようで。
「まあ私も巳年生まれなので、いつか旦那様に頭を下げることになるだろうとは覚悟していますが」
「……え」
「――だから『澪もちゃんと』覚悟しろよ?」
大人の色気を纏わせて微笑む完璧な執事は、今日も澪の心を捕えて離さない。
――Fin*


