へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜



 その場から動こうとしないミアに、溜め息を零しながら近づいてくるリヒトは明らかに不機嫌だ。


 相性調べで、何かやっちゃった……?!


 これまでの自分の行動を改めて思い返すが、これといって思い当たる節がない。だが、目の前にいる上司が不機嫌ということは、何かやらかしている可能性が高い。

 怒られる覚悟で下唇を噛み締めていると、力強く腕を引かれ、リヒトとの距離が急激に縮まる。



「魔獣達の訓練……か」


「……?!」


「その相性調べのせいか、無性にお前に腹が立っている……あいつらと楽しそうに会話している時なんか特にだ」


「えっ、えっと……??」



 怒りの原因が不明すぎるあまり、ミアは思わず困惑を滲ませた声を漏らし、見下ろしてくるリヒトの顔の近さに全身が熱くなる。

 前に見た甘えた瞳とはまた違う、力強いその瞳に吸い込まれそうになるのをぐっと堪えるので精一杯だ。


 っ……溺れてしまいそうっ……。


 その深い青に息をするのも忘れてしまいそうになる、全てを飲み込むその瞳。一度目を合わせたら、絶対に逸らせなかった。

 ミアのペリドットの瞳がキラリと揺れ、僅かにリヒトの眉が動き、彼の頭には尖った獣耳が顔を出す。



「だん、団長っ……耳がっ」



 声を振り絞るミアに、自由を与えるかのように自分から一瞬だけ目を逸らしたリヒトは、そのまま勢いよく彼女を抱きしめた。





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