へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
訓練を眺めているミアに、慌てた様子で駆け寄ってきたユネスにリヒトの執務室に来るように命じられ、二人揃って執務室へと急ぐ。
「お呼びでしょうか……!」
書類に目を通すリヒトを前にして、その表情から良からぬことが書かれていると察する。
「アデキネ大橋を囲む森で魔物出現が報告された。数はそう多くない。被害もそう大きくないことから、本部を動かすまでもないと判断し、この第四部隊を動かす」
「はい」
「そこでだ。積み重ねてきた訓練の披露も兼ねて、魔獣達を現地に連れて行く」
「……!」
リヒトの言葉に目を見開くと、彼は頬杖をしながら不満そうな目でミアを見つめた。
「なんだその顔は。せっかくの魔獣達の晴れ舞台だというのに、あいつらにそんな顔を向けるのか?」
「そ、そういうわけじゃなくて!まだ……その、あの子達が戦いに出向くって実感がないというか……」
元々は戦闘に特化した能力を持ち、魔物と対峙するための存在が魔獣という生き物。それは十分に理解していて、ここに来る前までは何ら意識はしていなかった。
しかし、彼らと共に生活し同じ時間を過ごしてしまえば、見方は変わってしまう。
「例え私の召喚獣ではないとしても、あの子達は私の大切な家族のような存在なんです。だから――」
「ここに召喚された魔獣の役割を知っていて、お前がそれを言うのか」
気持ちを呟くのを阻止するようにリヒトがミアの言葉を遮った。