へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜





 怒りを滲ませた彼の視線に後ずさりそうになるのを堪えて、そっと口を閉じる。



「召喚士に捨てられ、あいつらは常にお荷物だと罵られて来たんだぞ。本来戦うことで存在を証明する魔獣がそれすら出来ず、人の目から逃れるように檻の中で息を潜めていたあいつらに、戦うなとそう言いたいのか」


「っ……」



 怯えた魔獣達の目は今でも鮮明に思い出せる。居場所が無い彼らに、居場所を与えるためには……本来の責務を果たすそれが必要なのだ。



「家族のようなあいつらのことをよく知っているお前なら、しっかりと信じてやれ。恐れることは何も無い」


「そうだよ。ミアちゃん。その為にここまでずっと頑張ってきてくれたんでしょ?ミアちゃんの気持ちに応えたいと、魔獣達もきっと思っているはずだよ」



 壁際でミアとリヒトのやり取りを見守っていたユネスが、そっと隣にやって来て背中を撫でた。


 そうか、今の私は大切なあの子達の成長を妨げちゃってるんだ。


 いつまでも檻の中で大切に育てるのは、自己満足でしかない。彼らの成長を見守ることをせずに、懐の中で甘やかすのは存在意義を殺すのと一緒の事。

 それを自らの手でやってしまいそうになっていた事に気づき、悪い考えを消し去るために強く頬を両手で叩いた。リヒトの言葉に、ミアの中で根を広げかけていた不安が一気に枯れて消える。







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