エレベーターから始まる恋
坂本 雅(サカモト ミヤビ)、27歳。
転職で中途入社して早二年。
精密機器を取り扱うメーカーで、営業事務をしている。

特にアレンジも施していないダークブラウンに染めたセミロングの髪は綺麗に切り添えられており、せめてものこだわりとして前髪は流行りのシースルーにしてみている。
線の薄い奥二重は特に人の印象に残らないだろう。
胸は普通。特別大きくもなければ小さくもない。
身長は150センチ台と、年齢よりも若く見られることもしばしば。

周りは"ちょうどいい"と褒めるかのような口振りでよく言うけど、ようは"平凡"と言うわけだ。

そんな平凡な私は、直属の上司に当たる営業部長の石岡さんに入社したころからイジメ…いや、ご指導いただいている。

"仕事が遅い" "物覚えが悪い"
挨拶のように毎日言われる。
自分なりに努力して、製品の知識も勉強して毎日頑張っているつもりではあるのだけれど、どうにもうまくいかないことばかり。

石岡さんからのイジメ…ご指導には慣れてもさすがに毎日怒鳴られたら業務が終わる頃には疲労困憊。

社内は月末処理と取引先への提案書作成などでピリピリしているし、石岡さんはいつも怒っているし。
よく二年も続けている。いや、気づけば二年も経ってしまったのだ。
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