エレベーターから始まる恋
翌日、重い足取りで会社に向かう。
私の会社があるのは4階建のビルの最上階。
高さはそれほどだが坪数が広い。ザ・オフィスビルで、隣接している建物と比べても割と存在感を放っており、各フロアに数社入っている。

続々と人がビル内に吸い込まれていく。
私もその波に飲まれるように進み、自動ドアが開いた。

「あっ」

エレベーターに乗る手前、ある人物を見つけ人並みから外れてその人に声を掛ける。

「鈴木さん、おはようございます!」

「あら雅ちゃん、今日も元気ね」

ミントグリーンの作業着を身にまとった50代半ばの女性。
このビルの清掃員として働いている鈴木さんだ。
日々の業務の疲れを癒してくれる存在。
昨日の今日で身体も心も疲弊していたから、朝から鈴木さんに会えるのは結構嬉しい。

「全然元気じゃないですよ〜。昨日も怒られっぱなしで…でもまぁ、私が要領悪いのがいけないんですけどね」

「毎日頑張っているじゃない。嫌なことがあってもこうして会社に来ているだけ偉いわよ」

あぁ、全国の働く人々にその声をお聞かせください…
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