エレベーターから始まる恋
「坂本さん、これ数値が違うような気がするんだけど…」
キーボードを叩く手を止め、向かい側から資料を差し出す大橋さんに顔を向ける。
「え、本当ですか」
受け取ったそれは、朝イチで作成を頼まれていた注文書。
どうも頭が上手く回転せず、そんな中時間をかけて作成したものだった。
指摘された箇所を見てみると、言われた通り確かに一桁誤っていた。
とんでもないミスだ…
「申し訳ありません!!すぐ修正して出し直します!!」
公私混同もいいところだ。
ぼーっとしてこんなケアレスミスしてしまうなんて。
「だ、大丈夫?」
心配そうな目で見つめられ、理由も理由なわけで尚更申し訳なさが立たない。
「すみません…」
恐る恐る石岡さんの席に目をやる。
いつもなら物凄い剣幕で詰め寄ってくるのにも関わらず、今日はパソコンの画面に集中している。
おかしい…最近環境が狂っている気がする!