エレベーターから始まる恋

何とか一日を乗り切った私は、帰り支度を整えてスマホを開いた。
郡司さんからは特に連絡は来ていない。

指定されたのは、ここから徒歩5分ほどの場所に立つ商業ビルの最上階にあるレストラン。

ドキドキしながらエレベーターに乗り込む。
3階で止まり扉が開き、数人入ってくるが、そこに郡司さんの姿はなかった。
ホッとしつつ、どこか残念な気持ちもあった。

レストランがあるフロアまで辿り着き、再びスマホを開いた。
時刻は約束の10分前。

着いたことを一言連絡入れようとメッセージアプリを起動した時だった。

「ごめん、待たせた?」

レストランまで続くエレベーター2基のうち、私が乗ってきた方とは別のエレベーターから姿を現した。

「郡司さん」

「行こうか。何食べたい?」

正直緊張のあまり空腹感はそこまで感じられず、比較的綺麗に食べられそうなパスタにさせてもらった。

目の前に座る郡司さん。
その光景に現実味がなく、まるで夢の中にいるようで身体がふわふわする。
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